なぜペイパルはPaidyを選んだのか? 国内BNPLの今後の展望を歴史からひも解く:急成長するBNPLの業界見取り図(1/4 ページ)
前編では、なぜBNPLと呼ばれる「後払い」が急速に伸びているのかを、その課題と共にチェックした。後編では、日本国内における「後払い」の特徴をその歴史からひも解きながら考察してみたい。
国内でも急速に成長するBNPL。Buy Now Pay Laterの略で、国内では一般に「後払い」と呼ばれる。これまでの分割払いとの違いや、国内でのBNPLの歴史を踏まえた今後の動向とは? 黎明期から後払いサービスの開発に携わり、現在は後払いサービスなどの債権回収を支援するLectoを創業した小山裕氏による寄稿。
前編では、なぜBNPLと呼ばれる「後払い」が急速に伸びているのかを、その課題と共にチェックした。後編では、日本国内における「後払い」の特徴をその歴史からひも解きながら考察してみたい。
筆者が把握している限り、「後払い」は、国内においては2002年にネットプロテクションズが、ユーザー一人あたりの信用供与額を5万円程度とした上で、専門事業者として運用を開始したのが始まりだ。
それ以前も後払いはテレビショッピングやカタログ通販などで各社が独自に展開するケースがあった。性善説に立ち、各通販会社などが購入者との間で個別に自社独自の判断で後日の銀行振込等による代金支払いを認める方法だ。
あるいは宅配業者を通じた代金引換での販売方法も、広義の意味では「後払い」的な支払い方法だと言ってもいいかもしれない。いずれにせよ、届いた商品を確認してから支払いをしたい、そもそも現金で支払いをしたいというユーザーニーズを捉えた形だ。
しかし、通販会社各社で独自に後払いの運営を行うことは管理コスト、貸倒れコストの観点から決して合理的とはいえない。そこに目をつけたのがネットプロテクション社だったといえる。第三者の決済事業者として「ECにおける現金払いの市場を取りに来た」という意味で画期的だった。
その後、10年程度の間に同様のサービスを開始する事業者が続々と増えていく。まず07年にキャッチボール(「後払いドットコム」)が参入し、12年にニッセン(現「スコア後払い」)が続く。その後も大手の信販会社や物流事業者も続々と参入するなど、「後払い」の市場は着実に大きくなっていく。
筆者が考えるに、決定的なターニングポイントとなったのは16年11月にGMOペイメントサービスがファッションEC国内最大級の「ZOZOTOWN」において、「ツケ払い」のサービス名称で「後払い」を開始するに至ったことだ。取扱商品金額1500億円以上(当時)の巨大ECモールに集う若年層を中心に「後払い」の認知が急激に拡大することとなる。
ここで留意すべきは、いずれの「後払い」もEC通販を前提、つまり「物」の購入を前提にした決済サービス設計となっていることだ。すなわち、商品の届け先つまりユーザーの住所地をキー情報として、その住所地に対して後払いの支払い票を送付することを前提にした「後払い」であることが共通点だ。逆にいえば、「商品」の到着を確認できず支払伝票を送付する先がない場合には「後払い」は利用できない。「後払い」事業者からすれば、貸倒れリスクをヘッジするためにも、ユーザーの住所情報を取得することは重要な視点だったのである。
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