なぜペイパルはPaidyを選んだのか? 国内BNPLの今後の展望を歴史からひも解く:急成長するBNPLの業界見取り図(2/4 ページ)
前編では、なぜBNPLと呼ばれる「後払い」が急速に伸びているのかを、その課題と共にチェックした。後編では、日本国内における「後払い」の特徴をその歴史からひも解きながら考察してみたい。
物販を前提としない後払い登場
そのような中、一社、独自の特色を打ち出した「後払い」事業者がいた。Paidyである。Paidyは14年から、ペイディ翌月払い(現サービス名「ペイディ」)を提供開始した。加盟店のECサイトで、商品注文時に携帯電話番号とメールアドレスを入力し、スマートフォンにSMSで届く4桁の認証コードを入力するだけで、商品を購入できる。
つまり、これまでの他社の「後払い」事業会社と異なりユーザーの住所情報に依存しないため、デジタルコンテンツや役務商材など、「物」の売買にこだわらない多様な加盟店が導入可能なのである。1カ月に複数回購入しても支払いは購入ごとではなく、翌月に1回でまとめて支払う仕組みとなっている点も特徴だ。紙の請求書は発行せず、スマホに表示されるバーコードや、コンビニの端末で出力する受付票などを提示すれば、コンビニで支払いできる。
開始時期は18年と後発だが、もう一社特徴的な「後払い」事業者がいる。筆者がかつて社長を務めていた「後払い」の事業会社である。同社の「後払い」で特徴的だったのは、旅行代金やチケット代金など、当時の「後払い」の事業者の一般常識からすると「ハイリスクで非常識」と思われるような商材分野で「後払い」を展開したことだ。
特に画期的だったのは、VisaのEC加盟店で利用できるプリペイドのバーチャルカードを提供する事業会社に対して、ユーザーによるチャージ代金を翌月末までにコンビニなどで後払いできるサービス(以下、「後払いチャージ」)を展開したことだ。後払いチャージ可能な上限額は1回につき最大5万円で、ユーザーは電話番号、メールアドレス、生年月日、氏名を入力するだけで事実上「現金そのもの」を「後払い」で利用できるため、UXが良く、大きな注目を集めた。ユーザーの返済時の支払いも、もちろんスマホの操作を前提にコンビニエンスストアで支払うかネットバンクからオンラインで支払うかで完結する。
後払いチャージは、独自与信モデルの強化並びに貸倒れリスクヘッジのための回収モデルの実装が前提になる点に留意する必要があるが、「後払い」事業者におけるマネタイズの手段として非常に効用と伸びしろのあるサービスモデルだと考えている。
19年に入るとメルカリグループのメルペイが、「メルペイ後払い(現サービス名「メルペイスマート払い」)を開始するに至り、ユーザーの「住所情報を前提としない」「支払いを郵送に頼らずスマートフォンで完結する」タイプの後払いサービスが益々一般的になっていった印象だ。
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