なぜ某カフェチェーンは時給を上げないのか 「安いニッポン」の根本的な原因:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
アルバイトの応募が少ない――。某カフェチェーンから、このような嘆きの声が聞こえてきた。人口減少の問題もあるだろうが、なぜバイトが集まらないのか。その理由は……。
面接は辞退させてください
一体どういうことか、『朝日新聞』(11月1日)の『「他に決まりましたので…」 飲食業界、求人増えたが辞退も増えた』という記事を例に解説していこう。
このニュースの中には、アルバイトの採用が日を追うごとに難しくなっている、という東京・池袋の某カフェチェーンが登場する。以前は週に20件近くあった応募が10月に入ったら半減、その後も減る一方で、今では週5件前後にまで落ち込んで、選考中にこんなことを言われるケースも急増しているという。
「他の飲食業のお店に先に決まりましたので、面接は辞退させてください」
悩む店長は人が集まらないのならバイトの離職を防ぐべきだという考えに至り、定期的な面談をやったり、お互いのいいところを褒めあったり、働きやすい環境にしようと奮闘。「半年後、1年後など先々の店づくりを考えると、働く人のやりがいを高めることが不可欠」と取材に答えている。
ただ、筆者はこの記事を読んで大きな違和感を覚えた。語られているのが雇用側の都合ばかりで、アルバイト側にとって最も大切な「賃金」などの労働条件について全く触れられていなかったからだ。
こちらのお店を蹴って、他の飲食店を選ぶバイトが増えてきたということは常識的に考えれば、この店よりも賃金や条件が勝っていると考えるべきだ。しかし、記事では見事にそこはスルーされている。気になったので調べてみると、このカフェチェーンのWebサイトに当該店舗の募集があり、「時給1041円」と記されていた。ご存じのように、これは東京都の最低賃金。ギリギリまで低く固定されているのだ。
こういう情報がインプットされると、このニュースの受ける印象も180度変わってくるはずだ。なにせ同じエリアには、もっと時給が高いカフェがたくさんあるからだ。例えば、「銀座ルノアール」のWebサイトで、池袋東口店の求人情報をみると、「時給1100〜1500円」とある。また、若者のバイト先として人気の高いスターバックスも同じく池袋エリアの店の求人募集をみると、「時給1090円以上」で年3回昇給の機会がある、と説明されている。
つまり、このカフェが今後、労働力を確保をしていくのにやるべきことは、「みんなで褒め合う」とか「やりがいを高める」という精神論へ傾倒することなどではなく、「最低賃金労働」をやめて、賃上げの努力をしていくことなのだ。
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