「愛読書は?」と質問する不毛な新卒採用を、日本人が始めてしまったワケ:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
愛読書はなんですか?――。就職採用試験で、こんな質問をする面接官が増えているという。そもそも、なぜ愛読書を聞くのがダメなのか。背景にあるのは……。
「愛読書はなんですか?」
就職採用試験で、こんな質問をする面接官が増えているという。滋賀県教育委員会が高校生を対象とした独自調査で、コロナ前の3倍近くに膨れ上がったと、「読売新聞オンライン」(11月14日)が報じている。
県教委の分析では、これはコロナ禍で読書を趣味とする若者が増えて、履歴書の「特技・趣味」の欄に「読書」と書くケースが多くなっているからではないかという。
確かに、高校生の多くはコロナ禍で部活も満足にできない状況が続いていた。友だちと集まって何かにチャレンジする機会もない中で、本、漫画、YouTubeを視聴する時間が増えたというデータもある。ただ、面接戦略的には履歴書に「趣味・動画視聴」はイメージが悪い。そこで必然的に「読書」を趣味とする新卒高校生が増え、そこに引きずられる形で、面接官からの質問も増えた、というのは理屈としてはよく分かる。
ただ、もし履歴書に「趣味・読書」という記載を目にしても、「愛読書は?」という質問をしてはいけないらしい。
どのような本を読んでいるのかというのは、仕事をするうえでの能力や適正には関係がない。また、尋ねた側にまったく他意がなくとも、思想信条を調べていると受け取られる場合もある。厚労省も愛読書を尋ねることは思想信条に関わることなので、就職差別につながる恐れがあると指摘している。
「だったら趣味・読書なんて書いてくるな!」「そもそも履歴書に特技・趣味欄があるのが悪いだろ」とツッコミを入れたくなるような人もいるだろうし、「コミュニケーションがちゃんと取れるかを確認するためにも、こういう話題は必要では」とNG質問という扱いに納得がいかない方もいるだろう。
なかなか悩ましい問題ではあるが、個人的に関心があるのは、そもそもなぜ面接で「特技・趣味」などの質問をするようになったのかということだ。実務経験がないのだから、成績とかどんな素行の生徒だったのかなどを聞くというのは分かる。働くうえで健康は大事なので、運動やスポーツなど経験も判断材料になるだろう。ただ、趣味や特技など実際に働くうえではまったく関係ない。なぜそんな不毛なやりとりが常識となったのか。
この手の質問がある理由としてよく言われるのが、「共産主義フィルター」としての役割だ。
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