やっぱり紙で保存も可能に? 電子帳簿保存法、国税庁が懸念解消(2/2 ページ)
2022年1月から施行される電子帳簿保存法。国税関係の書類の電子化を進めるための法律だが、その中の電子データで受け取った領収書については、紙で保存ではなく電子データのまま保存しなくてはいけないという項目が波紋を呼んでいる。単にデータとして保存するだけではなく、国税庁が求める検索要件などに対応しなくてはいけないからだ。
国税庁が懸念解消
こうした声に対して、国税庁は11月12日に「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)〜令和4年1月1日以後に保存等を開始する方〜」に、追加で「お問い合わせの多いご質問(令和3年11月)」を公開した。
補4 一問一答【電子取引関係】問 42
【補足説明】
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務に関する今般の改正を契機として、電子データの一部を保存せずに書面を保存していた場合には、その事実をもって青色申告の承認が取り消され、税務調査においても経費として認められないことになるのではないかとの問合せがあります。
これらの取扱いについては、従来と同様に、例えば、その取引が正しく記帳されて申告にも反映されており、保存すべき取引情報の内容が書面を含む電子データ以外から確認できるような場合には、それ以外の特段の事由が無いにも関わらず、直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではありません。
電子帳簿保存法が求める保管法に従わないと、青色申告を取り消されたり、その費用が経費として認められないのではないかという懸念があったが、電子データの保存法については、厳格な罰則は見送ったということだ。
国税庁が直前になってこうした補足説明を出した背景には、業界団体からの働きかけもあった。会計ソフト大手の弥生の岡本浩一郎社長は、国税庁に働きかけを行ったことブログに記している。
これまではとりあえず何でも紙で保存していれば万能だったわけですが、来年1月以降は電子取引に関しては紙での保存ではなく、電子データとして保存しなければならなくなります。
電帳法という知る人ぞ知る法律が、いつの間にか全事業者に影響を与えうるものになっていたわけです。しかもその改正が施行されるのは来年1月。弥生としても事業者の皆さまに告知すべく色々と準備を進めてきたものの、事業者の対応として来年1月は到底間に合わないと非常に強い危機感を持っていました。
今回、弥生PAPカンファレンス 2021秋において、多くの弥生PAP会員から改めて強い懸念を共有いただいたことから、弥生として問題意識を共有する3社と共同し、10月から11月にかけて、財務省および国税庁に働きかけを実施しました。この結果、幸いにして、懸念を一部解消する進展が見られました。
今回、周知の不足と「電子保存義務化」という内容から混乱が起きた。ともすれば「領収書はデータではなく紙で送ってほしい」という電子化に逆行する動きさえ起きかねなかったわけだが、直ちに罰則が適用されるわけではないという国税庁の説明で、急速な電子化対応が強いられることはなくなった。
ただし、国税書類は7年間の保存が義務付けられており、管理保管だけでも大変な労力がかかる。これを電子化することは企業側にとっても重要なことだ。いずれは電子データの保存義務に対する罰則が課されることになっていくだろう。
企業は電子化のロードマップを真剣に考えざるを得ないタイミングに来ている。
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