優秀なエンジニアを確保するために何をすべきか ニチガスに聞く“2025年の崖”を超える方法:DX人材が足りない(1/3 ページ)
ニチガスでは、もともと自社業務のデジタル化を目的に作った社内システムが、社外向けのサービスの開発につながった。その際、どんなハードルがあったのか。事業責任者に話を聞いた。
本記事について
約1500人のIT人材を抱え、そのうち1300人ほどをベトナムなどの海外エンジニアが占める──そんな異色の企業「Sun Asterisk」。企業のDXに携わり、事業のデジタル化を数多く手掛けてきた(参考:5年間でベトナム3位の人気企業に 1500人の多国籍IT集団はどのようにして生まれたのか)。そんな同社の小林泰平代表取締役がモデレーターとなり、有名企業のプロジェクト担当者と対談し、どのようにDXを実現したのかを探る。
日本瓦斯(ニチガス)は近年、デジタルサービスを次々に開発・提供している。既存のエネルギー事業に加え、デジタライゼーション(事業のデジタル化)に成功したのは、まず足元のデジタイゼーション(業務プロセスのデジタル化)を細かく進めたことが関わっている。というのも、同社が提供するデジタルサービスの多くは、もともと自社業務のデジタル化を目的に作った社内システムが原型であり、その効果の高さからサービス化に至ったという。
前回はニチガスの松田祐毅氏(執行役員、エネルギー事業本部 情報通信技術部部長)を招き、同社がデジタイゼーションからデジタライゼーションへとつなげたプロセスを聞いた。
社内業務のデジタル化を新しいサービスへと発展させるには、いくつかのハードルもある。そのハードルとはどんなもので、どう乗り越えるべきなのか。引き続き対談をもとに解き明かしていきたい。
人の動きに合わせてシステムを設計すると、デジタライゼーションは生まれない
小林: ニチガスが提供する「雲の宇宙船」や「ニチガスサーチ」は、もともとニチガス社内で使っていたシステムをサービス化しましたよね。内部システムを外部に提供するとなると、いろいろな難しさもあると思います。
僕も企業の基幹システムを開発してきましたが、そこで感じたのは「システムが社内のオペレーションフローや組織、人の動きに合わせて作られていることが多い」ということです。だとすると、ニチガスのように社内システムを外に出そうとすれば、他社のオペレーションフローにマッチしないこともありそうですよね。
松田: そうですね。社内システムを作るとき、その企業でのオペレーションフローや人の動きを設計の“単位”にしてしまうと、外部サービス化は難しく、デジタイゼーションで止まってしまいます。デジタライゼーションにまで発展させるには、単位を人ではなくモノやサービスにしないといけません。設計の基準や中心が変わってきますよね。
小林: つまり、たとえ最初は社内のシステムを作るとしても、その企業のオペレーションフローや組織に合わせたものから脱却して、ユーザー中心の設計を意識しないとダメということですよね。
松田: はい。ただこれはすごく難しい部分です。自社の業務フローを一度抽象化して、どんな情報の塊を扱っているのか、それをどんなシステムに落とし込めば良いのか捉え直さなければいけないので。そうしてデジタル化しないと、その企業でしか使えないシステムになってしまうでしょう。
小林: 基幹システムを作るときは人のフローに合わせがちですし、さらにそのシステムを使い続けると、今度は人の動きもシステムにとらわれていきます。こういった人の動き方をリセットすることも重要なのかもしれません。
新しい市場を作る人材、事業を作る人材が不足
小林: その他、デジタライゼーションにおけるハードルはどんな部分にあると感じていますか。
松田: デジタライゼーションの最終ゴールは、新しいデジタルサービスを事業化することです。ニチガスも雲の宇宙船やニチガスサーチというサービスを作り、マネタイズもできていますが、事業化までいけるかはこれら次第です。問題は、事業化をけん引する人材がいないこと。これはもうデジタル人材というより、新しい市場を作る人材、事業を作る人材が不足しているといえます。
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