なぜ、DXが進まないのか? 企業が意識すべき「4つのポイント」:【後編】沢渡あまね「DXの勘所」(1/3 ページ)
デジタル化もままならない組織が多い中で、日本企業がDXを成し遂げるまでには複数のハードルがある。本記事では350以上の企業などで組織・業務改革支援の経験を持つ、沢渡あまね氏が、DXの進め方について解説。組織の経営者やマネジャーが意識すべき「4つのポイント」を紹介する。
「日本企業にはDXが必要だ」と言われるようになってから数年がたつ。しかし、日本のビジネスの景色は変わっているだろうか?
デジタル化もままならない組織が多い中で、日本企業がDXを成し遂げるまでには複数のハードルがある。
本記事では350以上の企業や自治体、官公庁などでの組織変革支援や業務改革支援の経験を持つ、作家でありワークスタイル専門家の沢渡あまね氏が、DXの進め方について解説。組織の経営者やマネジャーが意識すべき「4つのポイント」を紹介する。(編集部)
【前編】「DXとは「すっ飛ばす」こと DXが進まない企業に欠けている視点」
著者:沢渡あまね
作家/ワークスタイル&組織開発専門家。あまねキャリア代表取締役CEO、なないろのはな取締役(浜松ワークスタイルLab所長)、NOKIOO顧問ほか。350以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書『バリューサイクル・マネジメント』『職場の科学』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』ほか。#ダム際ワーキング 推進者。
DXを推進する際のつまずき
筆者が企画およびアドバイザーを務める「組織変革Lab」(組織変革を目指す企業のオンライン越境学習サービス)のディスカッションで、企業がDXを推進する際にどんな点がハードルとなっているかが言語化された。その主な内容を以下に記す。
(1)業務改善やBPRとの違いが分かっていない
(2)DXに必要なスキルやマインドが未定義
(3)DX推進組織だけに丸投げされる
(4)従来組織(事業部門、バックオフィス)が動かない
(5)既存の業務が安定しているため、DXに対する本気度が醸成されにくい
(6)人事部門が変わろうとしない、動こうとしない
(7)PoCで終わってしまう
(8)社内の温度差が大きい
(9)上位層のマインドが変わらない
※「組織変革Lab」 受講者(複数の企業の部長・課長・担当者)の声より
これらを解決するためには、経営トップとの密なコミュニケーション、危機意識の社内共有および人事部門へのテコ入れ、社内広報部門と連携したチャレンジマインドや風土の醸成、管理職や社員の育成(スキルアップの投資)、外部人材の登用、越境学習の活用、人事制度の改訂(デジタルに適応できない、変化に抵抗する人材を冷遇する仕組みに)、既存事業と新規事業の組織体分離、PoCと並行した中長期的な組織開発などが求められる。
組織の経営・役職層に意識してほしいこと
組織の経営・役職層に意識してほしいこととして、筆者から4つの提言をしたい。いずれも、企業向けの講演などで最近強調しているものである。
関連記事
- DXとは「すっ飛ばす」こと DXが進まない企業に欠けている視点
DXは間違いなく、現在ビジネスにおけるトレンドワードだ。しかし、その本質を理解している人はどれだけいるだろうか。本記事では350以上の企業などで組織・業務改革支援の経験を持つ沢渡あまね氏が、単なる“デジタル化”では成し得ない、“DXの本質”について解説する。 - 「iPhoneにタイヤを付けた」ような車が主流になる中、日本が世界に追いつくためにすべきこと
ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長=マーティン・パーソン氏は、日本の現地採用でボルボに入社し、スウェーデン本社に異動したという異色のキャリアの持ち主だ。日本の現場と世界の潮流の双方を知るパーソン氏に、グローバルな視点から見た日本企業の現状や進むべき方向性について話を聞いた。 - 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──? - DXを阻むのは「雇用文化」? 日本企業が改革できない“3つの理由”
なぜ、日本企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)をうまく進められないのだろうか。ITエンジニアの雇用と育成にまつわるサービスを提供するpaizaの社長の片山氏が、「DXとは何かの理解」「雇用文化」「経営」の3つの側面から解説する。 - 「退職者ネットワーク」は人材不足のIT企業を救うのか? TISの取り組みは
企業の離職者やOB・OGの集まりを指す言葉「アルムナイ(alumni)」。海外ではアルムナイを貴重な人材として捉える意識が浸透しているという。日本ではまだ聞きなれない言葉だが、大手システムインテグレーターのTISでは、「アルムナイネットワーク」を作り、退職した人たちとつながりを持ち続ける取り組みを行っているという。話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.