「iPhoneにタイヤを付けた」ような車が主流になる中、日本が世界に追いつくためにすべきこと:ボルボ・カー・ジャパンCEOの組織論(1/3 ページ)
ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長=マーティン・パーソン氏は、日本の現地採用でボルボに入社し、スウェーデン本社に異動したという異色のキャリアの持ち主だ。日本の現場と世界の潮流の双方を知るパーソン氏に、グローバルな視点から見た日本企業の現状や進むべき方向性について話を聞いた。
VUCAの時代といわれ、世の中は先行き不透明な状況が続いている。企業がこの先、10年、20年と事業を継続するためには、ダイナミック・ケイパビリティ(自己変革能力)が不可欠だ。ただ、一般に「日本人は変化を嫌う」「日本企業は、変化への対応が遅い」といわれる。
そんな中、日本を深く理解しながらも、日本が変わるべきポイントについて的確に指摘する経営者がいる。ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長、マーティン・パーソン氏だ。
本論に入る前に、パーソン氏のユニークな経歴に触れておく。スウェーデン出身のパーソン氏だが、ビジネスマンとしてのキャリアは「日本の現地採用」から始まった。
パーソン氏は日本の大学に留学後、1999年にボルボ・カー・ジャパンの前身であるボルボ・ジャパンに現地採用で入社したのだ。その後2008年に、スウェーデンの本社、ボルボ・カー・コーポレーションに異動した。
そして、ボルボ・カー・ロシア、同・中国のカスタマー・サービス担当副社長を歴任し、16年には、再びボルボ・カー・コーポレーションに戻り、グローバル・カスタマー・サービス担当副社長として、1500人以上のスタッフを率いて世界のアフターマーケット戦略の陣頭指揮を執ってきた。
その後2度目のボルボ・カー・ロシア赴任を経て、20年9月からボルボ・カー・ジャパンに返り咲き、日本マーケットの販売拡大に尽力している。ちなみに、日本法人の現地採用から本社に異動し、幹部クラスまで上り詰めた事例は初めてで、異例の出世といえる。
本稿では、日本と海外の両方で、豊富なビジネス経験を持つ、ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長マーティン・パーソン氏に、グローバルな視点から見た日本企業の現状や進むべき方向性、また、大きく変わろうとしている自動車業界の中で、インポーターとしてのボルボ・カー・ジャパンの生き残り戦略についてインタビューした。
「カイゼン」は、日本が世界に誇る能力
スウェーデン、ロシア、中国でのビジネスを経験し、約12年ぶりに日本に復帰したパーソン氏。それだけの時間を経て、彼の目に今の日本企業は、どのように映っているのだろうか。
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