スバルは、どこで儲けている? 国内もASEANも中国も欧州でも売れてない:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)
小さなメーカーですが、他にないキラリと光る優れた技術を持っているというのがSUBARU。しかし、どれだけSUBARU車が売れているかといえば、国内ではトヨタの10分の1。しかもASEANも中国も欧州でも、ぜんぜん売れていないのです。では、どこでSUBARUは儲(もう)けているのでしょうか?
大型車が売れる北米
稼げるようになったのは、北米市場では日本よりも大型で、儲けの大きいクルマが売れているからです。例えば、スバルの最大のセダン・ステーションワゴンであるレガシィは、本国内では年間1万台も売れませんが、米国では年間に20万台規模で売れているのです。
また、北米市場が儲かるということで、SUBARUの商品ラインアップも変化してきました。その象徴がレガシィです。初期のレガシィは、日本の国内環境にマッチする5ナンバーサイズでしたが、米国で売れるようになるほどにボディが拡大してゆきます。もちろん、サイズが大きくなるほどに日本での売り上げは減少するのですが、その穴を埋めるために、日本市場にマッチするレヴォーグが誕生したのです。
また、パワフルなターボエンジンを搭載するスポーティなWRXシリーズが、今も新型になって登場するのも米国のニーズあってのもの。燃費規制が厳しくなった欧州や日本では、WRXシリーズは時代の流れに反する存在です。しかし、北米では若い層にSUBARUのWRXは、今も熱烈に支持されているとか。
SUBARUの販売が北米に偏ってしまったのは、経営戦略的な理由もありますが、もともとのSUBARUの個性も大きかったのではないでしょうか。SUBARUの得意なものは、優れた4WD技術であり、高い安全性です。逆に苦手なのが、安価な小型車であり、燃費の良い環境対策車です。
そうしたSUBARUの良いところ、悪いところをすべて受け入れてくれたのが北米という市場だったのです。求められるから、それに応えて変化し、そうなることで、さらに絆(きづな)が強まる。北米市場とSUBARUの関係は、言ってみれば相思相愛の二人のようなもの。いつまでも熱い恋愛が続くことを祈ります。
筆者プロフィール:鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。
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