コストコと並ぶロードサイドの“雄” 知る人ぞ知る鮮魚チェーン「角上魚類」が急成長している理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
関東を中心に22店を展開する鮮魚専門店の「角上魚類」。コロナ禍でも業績が伸び続け、1日に1万人もの顧客が訪れる店舗もある。強さの秘密を創業者に聞いた。
鮮度と価格がイマイチだと気付いた
同社の柳下(やぎした)浩三会長が寺泊の小さな魚の卸商を継いだ45年ほど前、状況は今と大きく異なっていた。家業は傾き、風前の灯(ともしび)となっていた。当時は、流通革命の嵐が吹き荒れ、ダイエー、ジャスコ(現・イオン)、イトーヨーカ堂などのスーパーマーケットが台頭。生鮮3品(青果、精肉、鮮魚)も、顧客がスーパーに買いに行く時代に入っていた。巷(ちまた)の鮮魚店は商店街ごと、どんどん消滅。売り先を失った魚卸も、業績が急速に悪化した。
1973年、新潟市内に出店したダイエーの店舗を視察した柳下氏は、百貨店のような壮大な店舗に圧倒されながらも、魚売り場に並ぶ商品の値段が高く、鮮度が決して良くないことに気づいた。そこで、スーパーの半値以下で、消費者に直接魚を売れば勝てると確信。店舗を改装して卸から小売りに業種を転換した。1974年、寺泊に鮮魚店を開いたのが、現在の角上魚類の始まりだ。
ダイエーなどのスーパーは、消費者主権を唱えて、圧倒的な販売力を背景に価格決定権を奪取し、良いものを安く売る価格破壊にまい進していた。ところが、鮮度が重要な魚に関しては、中間流通をいくつも通して全国に配送していた。魚が水揚げされてから2〜3日かかってしまい、味が落ちてしまうのだ。
角上魚類はもともと卸だったので、魚市場で直接買い付けることができた。経験で培った目利き力で選んだ新鮮な魚を、卸価格で一般消費者に売ったので、人気が爆発。地元ばかりではなく、長岡市街、さらには県内各所から買物客が訪れるようになり、たちまち繁盛店となった。
昭和末期には、家電のヤマダ電機(現・ヤマダホールディングス)、紳士服の青山商事、カジュアル衣料「ユニクロ」のファーストリテイリング、家具のニトリなど、特定分野に特化したカテゴリーキラー(パワーセンター)と呼ばれる量販店が台頭してスーパーを脅かすようになるが、角上魚類は魚の分野でその先鞭をつけたといえよう。
では、角上魚類はどのようにして、関東のロードサイドで魚を売りまくるビジネスモデルに到達したのか。柳下氏へのインタビューから足跡をたどってみた。
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