コストコと並ぶロードサイドの“雄” 知る人ぞ知る鮮魚チェーン「角上魚類」が急成長している理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
関東を中心に22店を展開する鮮魚専門店の「角上魚類」。コロナ禍でも業績が伸び続け、1日に1万人もの顧客が訪れる店舗もある。強さの秘密を創業者に聞いた。
群馬県の高崎市に着目
打開策を探る中、1985年に関越自動車道が全線開通し、関東と中越が高速道路で結ばれるようになった。柳下氏は寺泊から一番近い関東の主要都市として、群馬県高崎市に着目。開通の前年である84年、高崎のロードサイドに出店したのが、現在のビジネスモデルに結びついている。
「お客さまに寺泊までわざわざ来てもらうのではなく、今度はこちらから魚を持ってお客さまのいる側に出て行こうと思った」と、柳下氏は高崎店の狙いを語った。
ところが、いざオープンしてみると、冷凍魚のマグロや塩鮭のような加工した魚は売れても、鮮魚が全く売れなかった。当時の高崎市民の大半は、生の魚を見たこともなければ、食べたこともなかったのだという。高崎にも魚市場はあったが、鮮魚をほとんど扱っていなかった。
そこで、角上魚類では「この魚は焼き魚にすればおいしい」「これは煮付に良い」などと、一人一人の顧客に対して、食べ方を説明しながら販売するように工夫した。また、顧客の要望に応じて、切り身にしたり、刺身にしたりと、食べやすく加工した。すると半年後には、口コミで寺泊の時と同様に顧客が増え始め、鮮魚が見違えるくらい売れるようになったのだ。角上魚類は、「高崎に食革命を起こした」との理由で、高崎市から感謝状も送られている。
高崎店の成功を見て、関東を中心に各所から多くの出店要請が来た。しかし、当時の角上魚類は次々と出店する財力がなく、人材も育っていなかった。2年後には店も人も用意するからやり方を指導してほしいとの要請があり、FC(フランチャイズ)店の出店が始まった。FC店も順調に販売を伸ばし漏れなく繁盛店になり、3店、4店と増えた。しかし、5年後には柳下氏が指導に訪れて、魚の鮮度や値段の高さを注意しても守られなくなってきた。
それでも顧客がどんどん来るので、オーナーたちも柳下氏を疎んじるようになったという。オーナーたちはもはやロイヤリティーも不要と感じていた。そこで角上魚類の看板を外して、新しい屋号で鮮魚店を運営するようにしてもらった。
ところが、再スタートした元FC店で、今も営業している店は1つもない。結局、売れ残った魚がもったいないからと、3〜4日並べ続けていると、鮮度の悪さが明瞭になって顧客が離れていってしまったのだ。値段も高いと話にならない。
FCビジネスの難しさを痛感した柳下氏は、直営のみで出店するように事業を立て直し、1993年に首都圏直営1号店を埼玉県川口市に出店。今日に至っている。22店の内訳は、新潟県2、長野県2、群馬県2、埼玉県7、東京都4、神奈川県2、千葉県3となっている。
山梨県、栃木県、関西、東海からの出店要請も多い。しかし、新潟を早朝に保冷トラックが出発して、お昼頃までには到着する範囲で店舗展開する姿勢を崩さないのが、こだわりだ。
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