「俺らの時代は」を繰り返す“ノスタルジックおじさん”が、パワハラ上司になりやすいワケ:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
突然だが、「ノスタルジックおじさん」をご存じだろうか。いや、知らないはず。なぜなら、筆者(窪田氏)の造語だからだ。その「ノスタルジックおじさん」が、パワハラ上司になりやすいと指摘しているが、どういう意味なのか。詳しく見てみると……。
「ノスタルジックおじさん」とは
「ノスタルジックおじさん」とは一言で言うと、「自分が若手のころに刷り込まれた価値観やルールが絶対に正しいと盲信し、中高年になっても執着し続け、自分より下の世代に押しつける人」のことで、筆者の造語である。
なぜこんな言葉をつくったのかというと、報道対策アドバイザーとしてさまざまな組織の不正や不祥事の現場に立ち合ってみると、この類の人が多くいることに気付いたからだ。
例えば、ある会社で部下をいびり倒して病院送りにした上司がいた。「おまえ、使えなさすぎ」「オレなら恥ずかしくて給料もらえない」「生きている価値がない」などの暴言は日常的で、実際に蹴るなどもしていた。あまりにも常軌を逸した「指導」の数々に、会社側は何かこの上司と部下の間に個人的な怨恨でもあるのではないか、と社内調査を開始したが、仕事上のつながり以外一切ない。
そこで、この上司に直接、原因を問い質したがそこで奇妙なことが起きた。部下についてどう考えているのか、なぜこんなことをしてしまったのか、という質問をいくら繰り返してもまともな答えが返ってこない。はぐらかしているというより、何を聞いても“思い出話”になってしまうのだ。
自分が若手だった時代は、これくらい厳しい指導は当たり前で、同期の誰それはもっとひどい目にあった。当時は非常に辛かったが、今となって振り返ってみれば、そういう過酷な環境を乗り越えたことで大きく成長ができた、などなど。いかに自分たち世代が激しいハラスメントを受けてきたのかということを切々と訴えるのだ。
「いや、それはよく分かりましたけど、だからといって今の時代、部下に同じことをしてはいけないですよね。研修でも学んだはずなのに、なんでこんなことをしちゃったんですか」
そんな追及をしても、質問の主旨が分からないでポカンとして再び“思い出話”を繰り返す。そして、それがひとしきり終わるとお次は“持論”を振りかざす。最近はコンプライアンスだなんだと、若手がそういうプレッシャーにさらされていないので打たれ弱い。人として成長できないので本人にとっても会社にとっても良くない、などと世を憂(うれ)い始めるのだ。
関連記事
- なぜ某カフェチェーンは時給を上げないのか 「安いニッポン」の根本的な原因
アルバイトの応募が少ない――。某カフェチェーンから、このような嘆きの声が聞こえてきた。人口減少の問題もあるだろうが、なぜバイトが集まらないのか。その理由は……。 - 「日本のアニメ」は家電や邦画と同じ道を歩んでしまうのか
技術や品質が「下」だとみくびっていた相手に、いつの間にか追い抜かれてしまう。そんな悪夢がやって来るのだろうか。白物家電や邦画が追い抜かれたように、「日本のアニメ産業」も負ける日がやって来て……。 - 賃金は本当に上がるのか? 安いニッポンから抜け出せない、これだけの理由
選挙戦が盛り上がってきたが、ビジネスパーソンが気になるのは、やはり「賃上げ」だ。賃上げを達成するために、各政党は目玉政策を打ち出しているが、その中でひときわ目を引く「謎の政策」がある。それは……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.