「俺らの時代は」を繰り返す“ノスタルジックおじさん”が、パワハラ上司になりやすいワケ:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
突然だが、「ノスタルジックおじさん」をご存じだろうか。いや、知らないはず。なぜなら、筆者(窪田氏)の造語だからだ。その「ノスタルジックおじさん」が、パワハラ上司になりやすいと指摘しているが、どういう意味なのか。詳しく見てみると……。
「過去」ではなく「現在」に目を向ける
そして、この「世代間連鎖」は「忘年会」にも当てはまる。実は大昔から日本人は忘年会を「悪しき習慣」と捉えていた。例えば、戦時中の代表的な植民地新聞である『満州日報』(1932年2月19日)の中で、外国人に見せられない恥ずかしい習慣としてこんなことがあげられている。
『祝がある悲しみごとがあるといってはグデングデンに酔いつぶれるまで飲ませなければ義理のわるいのが日本人の習慣です、歓迎会、送別会、忘年会、新年宴会といえば赤字つづきの薄給サラリーマンでも無理算段をして高い会費を捻出して芸妓をよばねばならない情ない現状です』
要するに、当時の日本人にとっても忘年会は「できることなら参加したくない」というハラスメントの一種だったのだが、自分が経験したことなのでズルズルと先送りにされてきただけなのだ。
肯定派の皆さんは、「酒の先だから無礼講で本音が言い合える」「忘年会によってチームの士気が上がる」などとメリットを強調するが、本音を言い合うのが酒席でなくてはいけない合理的な理由も、全員参加である必然性もない。正当化したい気持ちは分かるが客観的に見れば、「なんでこんな意味もないことやってんの?」という悪しき習慣を惰性で続けているだけなのだ。
「昔は良かったなあ」が口癖のそこのあなた、知らぬ間に「パワハラ上司」などと陰口を叩かれぬよう、「過去」ではなく「現在」に目を向けることをお勧めしたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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