全固体電池は、なにが次世代なのか? トヨタ、日産が賭ける巻き返し策:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
全固体電池とは、電解質を固形の物質とすることで、熱に強い特性を得ることができる電池のことだ。以前は理論上では考えられていただけであったが、固体電解質でリチウムが素早く移動できる物質が見つかったことで、開発は加速している。
固形なのにリチウムイオンが動ける! 全固体電池
全固体電池とは、電解質を固形の物質とすることで、熱に強い特性を得ることができる電池のことだ。以前は理論上では考えられていただけであったが、固体電解質でリチウムが素早く移動できる物質が見つかったことで、開発は加速している。
それでも実際に電子を運ぶのはリチウムであれば全固体リチウムイオン電池となり、起電力などは従来のリチウムイオン電池と変わらない。
しかし安全性が高まれば、電解質内のリチウムの量を増やして大容量化することができるし、急速充電を行っても冷却装置を簡素化できるので軽量化にも結び付く。大容量化と急速充電の高電圧化、さらには軽量化でBEV(バッテリーEV、電池の蓄電だけで走るEV)の走行性能を高めることができる、というのが全固体電池に熱い視線が集まっている理由だ。
ただし全固体電池という構造は同じでも、実は電解質に何を使うかによって、その特性は変わってくる。現在開発されているのは酸化物系、硫化物系、窒化物系の3種類に分類されている。トヨタが開発しているのは硫化物系といわれており、出力特性が高いが発熱時には硫化水素ガスを発生させる可能性もあるため、安全対策も万全にする必要がある。
今回、日産は全固体電池の新たな電極素材に目星がついたとして、24年度中に試作生産ラインを稼働させるという。目指す性能は液系リチウムイオン電池に比べて容量2倍、充電時間は3分の1らしい。これが実現できれば凄いことだ。
関連記事
- 車検制度はオーバークオリティー? 不正も発覚した日本の車検の意義
自動車メーカーが、生産工場からの出荷時に行う完成検査で不正をしていたことが明らかになったのは2017年のことだった。そして今年は、自動車ディーラーでのスピード車検で不正があった。日本の乗用車に関する法整備は昭和26年(1951年)に制定された道路交通法、道路運送車両法によって始まっている。その中には幾度も改正されている条項もあるが、全てが実情に見合っているとは言い難い。 - シフトレバーの「N」はなぜある? エンジン車の憂うつと変速機のミライ
シフトレバーのNレンジはどういった時に必要となるのか。信号待ちではNレンジにシフトするのか、Dレンジのままがいいのか、という論争もかつては存在した。その謎を考察する。 - ガソリンには、なぜハイオクとレギュラーがある?
どうしてガソリンにはハイオクとレギュラーが用意されているのか、ご存知だろうか? 当初は輸入車のためだったハイオクガソリンが、クルマ好きに支持されて国産車にも使われるようになり、やがて無鉛ハイオクガソリンが全国に普及したことから、今度は自動車メーカーがその環境を利用したのである。 - 高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。 - アイドリングストップのクルマはなぜ減っているのか? エンジンの進化と燃費モードの変更
アイドリングストップ機構を備えないクルマが登場し、それが増えているのである。燃費向上策のキーデバイスに何が起こっているのか。 - トヨタがいよいよEVと自動運転 ライバルたちを一気に抜き去るのか、それとも?
トヨタは最新の運転支援技術を採用した新機能「Advanced Drive」をレクサスLSとMIRAIに搭載。さらに、先日の上海モーターショーでは新しいEVを発表した。そして驚いたのは、トヨタが今さら水素エンジンにまで触手を伸ばしてきたことだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.