高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。
国産車は取り決めによって時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。そこで今回は国産車に備わっているスピードリミッターの謎を解明したい。
日本でもようやく高速道路の最高速度が120キロに引き上げられたが、他の先進国ではそれ以上の制限速度の高速道路を有しているところがほとんどだ。クルマの性能と道路の性能は直結するものであり、道路環境が整わなければ、クルマの性能を引き上げても意味がない
国産車にスピードリミッターが装備されるようになったのは1980年頃から。それまでの国産車は排ガス規制が甘かったこともあって、ソレックスのサイドドラフトキャブなど、高性能なキャブレターを奢(おご)ったスポーツエンジンを搭載したクルマも少なくなかった。当時のクルマは軽く、サイズが小さいこともあって、最高速度で時速200キロ以上を謳(うた)うモデルがいくつも存在していたのだ。
その当時はクルマの保有台数が急速に増加しており、なおかつ交通事故死者が年間1万人超えが常態化していたことも影響していると思われる。高速道路が整備され出したこともあって、重大な交通事故の増加を懸念したこともあったのだろう。75年に運輸省から口頭で自動車メーカーに通達が出され、国産車には時速105キロで鳴り出す速度警告音と180キロ(軽自動車は140キロ)で作動するスピードリミッターが自主規制で備えられるようになった。
しかし80年代のスピードリミッターは、その速度を超えると燃料の噴射をカットするという、今考えればかなり強引な方法で行われていた。そのためリミッターが作動するといきなりエンジンブレーキが掛かって減速することになり、エンジンにとっても走行時の安定性にとっても良い制御とはいえないものだった。
2000年代に入る頃には、点火を間引きしてさらに燃料噴射も絞ることで180キロの速度を維持したまま、安定して走行を続けられるスピードリミッターに改良されている。
ちなみに欧米ではクルマの最高速度にリミッターを設けることは極めて少ない。ドイツの自動車メーカーが高級セダンに限り250キロを上限とする自主規制を設けたほか、最近になってボルボが180キロのスピードリミッターを設定(専用キーで解除可能)したくらいだろう。スーパーカーではブガッティ・ヴェイロンが375キロ、後継車のブガッティ・シロンが420キロでスピードリミッターが作動する(どちらも専用キーで解除可能)らしいが、クルマの耐久性と乗員の安全性を考えても、いささか中途半端なリミッターであるといえよう。
関連記事
- EUが2035年に全面禁止検討 エンジンは本当に消滅するのか
7月中旬、EUの欧州委員会は2035年にEU圏内でのエンジン車販売を禁止する方針を打ち出した。マイルドハイブリッドやフルハイブリッドも禁止される見込みだ。つまり、現時点ではバッテリーEVとFCVしか認められないという方向だ。 - アイドリングストップのクルマはなぜ減っているのか? エンジンの進化と燃費モードの変更
アイドリングストップ機構を備えないクルマが登場し、それが増えているのである。燃費向上策のキーデバイスに何が起こっているのか。 - トヨタTHSは、どうして普及しないのか そのシンプルで複雑な仕組みと欧州のプライド
前回の記事「シリーズハイブリッド、LCAを考えると現時点でベストな選択」を読まれた方の中には、こんな疑問を持たれた方も多いのではないだろうか。「シリーズハイブリッドなんかより、シリーズパラレルで万能なトヨタのハイブリッドシステムを他社も利用すればいいのでは?」 - ハイブリッドやEVのバッテリーはいつまでもつ? 寿命を決める温度管理
EVで気になるのは、やはりバッテリーの耐久性だ。寿命はバッテリーの特性によっても異なるが、実際の車両では温度管理などのマネジメントによるところが非常に大きい。 - トヨタ豊田章男氏の主張は、我が身可愛さの行動なのか?
電動化=脱エンジンなのか? それとも、日本の産業構造を一気に変えるようなことができるのだろうか。たしかに今ここで日本の産業構造を変えなければ、かつての半導体の二の舞いになる。そこで自動車産業を日本の基幹産業として存続させるためには何が必要なのか、ここで考えてみたい。 - トヨタ、ホンダ、スバル、日産が減産 自動車用半導体がひっ迫した3つの理由
世界中の自動車生産工場が新型コロナウイルスに翻弄されている。2020年後半に急速に業績を回復させたメーカーが多い一方で、ここへきて再び生産を調整しなければならない状況に追い込まれている。その理由となっているのが、半導体部品の不足だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.