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「安くてうまい」をキープした“企業努力”が、庶民を長く苦しめてきたワケスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

ステーキや牛丼などが続々と「値上げ」をしている。世界的に肉の生産が落ち込み、供給が追いつかないことが原因だが、多くの外食チェーンは長きにわたって価格を据え置いてきた。その結果、何が起きていたのかというと……。

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日本人の常識を広めたのは

 これにSNSユーザーがブチギレした。当然だ。新聞は経営層が安倍晋三首相(当時)と仲良く会食をするなどして、軽減税率対象という立場を勝ち取っていた。にもかかわらず、「値上げしないでがんばる」。――どの口が言うのか、とあきれる人が続出したのである。「値上げしない」ということはとにかく良いことなので、とりあえず増税のドサクサに紛れてアピールしておけばイメージアップにつながるだろ、というような「あざとさ」も感じてしまう。

 日本の世論形成に大きな影響を与えてきた『朝日新聞』がこんな調子だ。ということは、「安くてうまいのはいいことだ」「企業努力で値上げしないのは素晴らしい」という「安さ原理主義」ともいうべき価値観を広めた「犯人」はマスコミとしか思えない。

 「企業努力とは賃上げをすること」という日本の新たな常識を広めていくには、まずはこのような旧態依然としたマスコミに退場していただくことから始めるべきかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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