いい忘年会・悪い忘年会 まだまだ「忘年会賛成派」がいなくならない理由:「酒頼み」のコミュニケーションでいいのか(1/3 ページ)
忘年会シーズンとなったが、コロナ禍では大々的に実施する企業も少なさそうだ。行きたくない人はホッとする一方、「行きたかったなあ」と嘆く人も一部いるのでは。今回は、そんな双方の意見を見つつ、忘年会の今や、今後あるべき組織コミュニケーションを探る。
わが国における忘年会の歴史は古く、一説によると初めて文献に登場するのは室町時代、将軍足利義教の治世のこととされる。伏見宮貞成親王(後崇光院)が記した『看聞日記』において、1430年12月の記録に「夜百韻了一献。及酒盛有乱舞。其興不少歳忘也」という記載がある。年末の歌会が盛り上がった様子を「まるで『としわすれ』のようだ」と表現していることから、当時の庶民が年末に酒を飲んで乱舞するような行事をしていたのでは、と考えられているのだ。
特段宗教的な意味合いもない、年末の行事として忘年会が存在するのは、日本独自の風習とされるが、昨今のコロナ禍の影響で「出社」という形そのものが見直され、プライベートの過ごし方にも多様性の配慮が求められる現在、そもそも職場単位で人が集まって酒を飲む忘年会に意味はあるのだろうか。
先日、筆者が「職場の若手にとっての忘年会」の悲哀についてSNSに投稿したところ、多くの反響を頂いた。
このツイートには賛否両論あるかと思いきや、意外にも寄せられた意見のほとんどが賛同を示すもので「私も全部経験しました」「若手にとっての忘年会は苦行でしかない」「コロナ禍で唯一の恩恵は、忘年会など会社主催の飲み会をやらなくなったこと」など散々ないわれようであった。よほど多くの方が鬱積した思いを抱いていたのだろう。
忘年会はもちろん、新年会や歓送迎会、社員旅行など、職場には「参加することに意味がある」かのような宴席が以前から多数存在している。昔はそれらに参加することに疑問を抱かない人が多数派だったのかもしれないが、昨今は「会社の飲み会」というだけで忌避する声も多いようだ。
これは決して最近急に増えだしたわけではなく、以前から嫌な思いをしている人は大勢いたが、ネットやSNSの発達によって意見が顕在化し、「多様性の尊重」といった風潮に伴って、さらに声を上げやすくなったからだと考えられる。「ブラック企業」や「ハラスメント」と同じ構図といえよう。
忘年会のメリットとデメリット
忘年会のメリットとデメリットを考えるとき、デメリットは割とすぐに数多く上がることが多い。冒頭に紹介した項目とも重複するが、おおむね次のような意見が大半だろう。
- 参加しないと「和を乱す」「チームワークがない」などと非難される
- そもそも職場の人と飲む時点で楽しくないし、時間ももったいない
- お酌をさせられたり、無理やり飲まされたり、一発芸を強要されたりする
- 年長者の自慢話と説教を聞かされる上、相づちや反応を強いられる
- 全然楽しめないのに、会費やタクシー代がかかる
- 幹事をやるのも面倒だし、後になっていろいろと文句を言われるのも割に合わない
すなわち、貴重なお金と時間を費やすにもかかわらずつまらないし、一言でいうのならば「割に合わない」のだ。
一方で、忘年会に対してポジティブな思いを持っている人も一部ではあるが、いる。冒頭に挙げた筆者のSNS投稿に対して、「いや、わが社の忘年会は楽しかった」「忘年会にはポジティブな印象がある」と反応を返してくれた一部の「忘年会肯定派」である方々の主張を拝見すると、忘年会には次のようなメリットがあるという。
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