それ、本当にブラック企業? 日本社会に誤って広がる「ホワイト企業信仰」が迎える末路:働き方の「今」を知る(1/4 ページ)
「ブラック企業」というワードの一般化に伴い、あれもこれもブラックだと指弾されることも。筆者は、そんな風潮に警鐘を鳴らす。そもそも「いい会社」って何だろう。
「ブラック企業」を厳密に定義するのは難しい。人それぞれの価値観によって捉え方も異なるためだ。一般的には「大量採用した若者を、過重労働とパワハラで使いつぶす」「違法行為を黙認し、私利私欲を追求する」というふうに、「悪意をもった卑劣な企業」として認識されている。
また一般的にブラックだと認識されがちな業種として、「飲食・接客」「介護サービス」「不動産」「アパレル」「運輸・運送」などが挙げられる。いずれも労働集約的な面があり、激務の割に薄給で、離職者が多いといったイメージが共通しているようだ。
「ブラック企業専門家」としての筆者が定義するブラック企業とは「順法意識がなく、アンフェアな競争で私利私欲を追求し、ステークホルダーに迷惑を掛ける悪質な企業」だ。
ここでのキーワードは「アンフェア」。まともな企業であれば労働法を守り、極力残業させず、残業代も社会保険もキッチリ払ってまっとうな経営をするのだが、ブラック企業は法律を無視し、従業員を馬車馬のように働かせ、払うべきお金を払おうとしない。すなわち労働力を「安くコキ使う」ことができるので、その分商品やサービスをまともな企業より安く出せる。
そうすれば「コスパ」重視の消費者に選ばれ、アンフェアなことをやっているのに競争に勝ててしまう。こうやって「悪貨が良貨を駆逐する」状態になってしまうと、まともな経営をしているまともな企業がばかを見ることになる。これでは世の中は良くならないし、誰も報われないことになってしまう。
ブラック企業は全てが「悪」なのか
最近では、ブラック企業というワードが一般化したことにより、単に長時間労働の企業を「ブラックだ」と指弾するのを目にすることもある。もちろん、先述したように、長時間労働やパワハラで労働者を使いつぶすスタンスの企業であれば、その通りかもしれない。しかし、必ずしも長時間労働というだけでブラックだとは言い切れない面がある。
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