連載
技能実習生は今も「低賃金・重労働」の担い手なのか? 「夕張メロン問題」から考える:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
夕張メロンの減産がニュースになり、その理由が「技能実習生不足」ということから大きな話題を呼んだ。「低賃金・重労働」を押し付けられ、過酷な事情を耳にすることも多い同制度だが、実情はどうなっているのか。
北海道夕張市の名産品「夕張メロン」が、人手不足のため8万玉分の減産となる旨のニュースが先日「日本農業新聞」で報じられた。メロン農家はかねて高齢化が進んでおり、慢性的な人手不足状態であったが、特に今般の減産理由が「メロン栽培の主戦力であった、中国人の技能実習生がコロナ禍のため来日できなかった」ことである点が話題となっている。
【参考】夕張メロン 試練の季節 実習生不在、8万玉減産(日本農業新聞、5月24日)
本件については農家の苦境を憂うよりも
- 技能実習生が来日できないから減産ということは、『技能を習得してもらう』という趣旨が建前でしかなく、実質的に技能実習生が単なる『低賃金・重労働の担い手』だと露呈しているのでは
- JA夕張市では日本人アルバイトも募集していたが、条件は北海道最低賃金の時給861円。真夏の重労働を最低賃金で募集して人が集まらず、『人手不足』などと言っていること自体がおかしい
- 農家だけの問題ではなく、同じような事象が食品生産加工、繊維縫製、製造業などでも起きている。これは事実上、低賃金労働者の移民制度だ
――などと厳しい意見の方が多く見られた。では果たして、技能実習制度とはそんなに欺瞞(ぎまん)に満ちた、問題を孕んだ制度なのか。また技能実習生に頼らざるを得ない事業主はいずれも努力不足で、「苦境に陥っているのは自己責任だ」と突き放してよいものなのだろうか。
関連記事
- 官僚アンケートで発覚 未だに「残念すぎる」霞が関の働き方と、改革を阻むカベ
民間企業に投げかけられている「テレワーク7割」の掛け声だが、霞が関は実現できているのか? 官僚アンケートで明らかになったのは、残念すぎる内情だ。 - 日本人は、自らブラックな労働環境を望んでいるといえなくもないワケ
長く続くコロナ禍。解雇などのニュースを目にすることも多いが、国際的に見ると日本は比較的低めに推移している。ただ、その代わりに失っているものも少なくないと筆者は指摘する。 - 「テレワーク7割」どころか、紙業務・サービス残業が横行の霞が関官僚 「与野党合意」で民間企業の模範となれるか?
政府が要請する「テレワーク7割」だが、そもそも霞が関で働く官僚が達成できていない。それどころか、民間企業未満の過酷な働き方が昨今明らかになっている。その元凶ともいえる国会対応を巡る与野党合意で、民間企業の模範へと変わっていけるのだろうか。 - 愛知県知事リコール署名の不正はなぜ防げなかったのか? 受託者側から見る、問題の病巣
問題となっている愛知県知事リコール。不正の責任は受託者側にもあると筆者は指摘する。 - 厚労省「パワハラ相談員がパワハラ」──防止法に隠された逃げ道と、10年かけて体質改善した企業の結論
「死ねといったら死ぬのか」──厚労省のパワハラ対策相談員が部下の男性にパワハラをしていたことと、給与の1カ月間1割減額という加害者への軽すぎる対処が明らかになった。いったいなぜ、このようなことが起きたのか。昨年6月から「パワハラ防止法」が施行されたが、厚労省は制定にあたり、たたき台にはなかった「ある文言」を追加していた。 - 【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する
「ワタミの宅食」で起こった残業代未払い問題。それだけでなく資料改ざんやパワハラなど、「やっぱりワタミはまだブラックだったのか?」と思わせるような実情が告発された。本当にワタミはブラック企業へ回帰したのか。内部取材を敢行すると、思わぬ事情が見えてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.