技能実習生は今も「低賃金・重労働」の担い手なのか? 「夕張メロン問題」から考える:働き方の「今」を知る(2/5 ページ)
夕張メロンの減産がニュースになり、その理由が「技能実習生不足」ということから大きな話題を呼んだ。「低賃金・重労働」を押し付けられ、過酷な事情を耳にすることも多い同制度だが、実情はどうなっているのか。
そもそも「技能実習制度」とは
わが国では1960年代から、外国人を受け入れて技能研修を行う形の外国人研修制度が存在していた。これはあくまで座学中心の研修であったが、93年に現行の「技能実習制度」が創設されてからは、実習生は研修終了後、企業と雇用関係を結んだ「労働者」として生産活動に従事しつつ、実践的な技術を習得する形となった。当初は研修・技能実習の期間は合計で最長2年間だったが、97年からは最長3年間に延長されている。
しかし、当初制度下では実習生に対して労働関係法令が適用されなかったため、賃金や時間外労働等に関するトラブルが多発。結果として2010年に法律が一部改正され、技能習得期間のうち実務に従事する期間中は全て、労働法が適用される労働者として扱われることとなった。
その後、16年に技能実習生の保護に関する法律が施行され、技能実習の適正実施と技能実習生の保護を目的として「外国人技能実習機構」が設立された。技能実習計画を認可制、実習実施者を届出制、管理団体を許可制として、実習生に対する人権侵害行為への禁止規定を設け、違反には罰則が課されることが盛り込まれた。現在技能実習の対象となっているのは、農業関係、漁業関係、建設関係、食品製造関係、繊維・衣服関係、機械・金属関係、その他の合計85職種156作業で、受け入れ人数は一貫して増加傾向にある。
17年に施行された「技能実習法」において、本制度の目的と理念は次のように定義されている。
【目的】
- 人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識の移転による国際協力を推進することを目的とする
【理念】
- 技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならない
- 労働力の需給の調整の手段として行われてはならない
しかしこれはあくまで建前的な部分もあり、実際は、日本人の採用が困難な低賃金・重労働の職場に対して、途上国の安価な出稼ぎ労働者をあてがうシステムになってしまっている面もあるようだ。
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