いい忘年会・悪い忘年会 まだまだ「忘年会賛成派」がいなくならない理由:「酒頼み」のコミュニケーションでいいのか(2/3 ページ)
忘年会シーズンとなったが、コロナ禍では大々的に実施する企業も少なさそうだ。行きたくない人はホッとする一方、「行きたかったなあ」と嘆く人も一部いるのでは。今回は、そんな双方の意見を見つつ、忘年会の今や、今後あるべき組織コミュニケーションを探る。
賛成派が提示する忘年会のメリットは、次のようなものだ。
- 普段あまり話さない人と話すチャンス
- 組織内の話題についていけるようになる
- 上司や評価者に知られ、顔を売る機会になる
- 上司や評価者の人間性や考え方に触れられる
- 幹事をやることで段取り力が鍛えられる
つまり、組織内コミュニケーションの円滑化や、場合によっては自分自身のメリットにもつながるというわけだ。確かに、人事も評価も人のやることであるから、忘年会のような場で上司や評価者と接することで彼らの考えに触れれば「組織内で評価されるポイント」も把握でき、結果的に評価や昇進を得やすくなる、という構図はあり得るだろう。従って、「自身の実績だけでPRできるほどの圧倒的な優秀社員でない限り、忘年会に参加して顔を売っておくメリットはある」という主張も一理ある。
賛成派は、どんな忘年会をしているのか
ただ、こうした忘年会賛成派の意見を注視していくと、「忘年会嫌悪派」ともいうべき人々のイメージする忘年会と、全く違うスタイルの忘年会を実施していることが分かった。
肯定派の意見をまとめると、彼らが実施している忘年会は次のようなものとなる。
- 完全自由参加。会社行事として参加必須の場合でも残業代支給
- 段取りや仕切りは会社側(専任チームもしくは管理職)で実施参加者側の一般社員は純粋に飲食と会話を楽しむことに専念できる
- 従業員の慰労目的のため、もてなすのは会社(上司)側。飲酒や芸の強要は一切なく、むしろ上司側が部下にお酌して回ったりする
- 費用は会社持ち。普段自腹ではいけないような高級店で開催されることも
- 終電を逃した場合には、宿泊費やタクシー代を支給することも
そう、肯定派と嫌悪派とでは、全く違う忘年会を体験しているのである。「社員の慰労」とか「若手とコミュニケーションをとるチャンス」などといいながら上司がふんぞり返ってお酌を受けている多くの会社とは異なり、肯定派における忘年会とは「良い雰囲気の職場」の延長線上にあったのである。
忘年会は「絶対悪」か
つまり、忘年会そのものが悪いのではなく、あくまで旧態依然とした忘年会スタイルを貫く企業の体質が悪いのだといえる。
コロナ禍以降、組織内のコミュニケーションにまつわる課題感が大いに議論される流れとなっているが、その中で、「テレワークやオンライン会議では部下とうまくコミュニケーションが取れない」と文句をいう管理職をよく目にする。ただ、よくよく普段の仕事ぶりを見てみれば「常日頃からコミュニケーションの質も量も足りず、結果的に部下との信頼関係が築けていなかった」というケースも多い。
コミュニケーションを問題視するなら、まずその前時代的なコミュニケーションスタイルから改善すべきでは、というわけだ。同様に、職場の忘年会を組織内コミュニケーションの円滑化に寄与させるためには、従来のスタイルを改めなくてはならない。
関連記事
- 忘年会、スルーしたいのは若者だけではない! 「同一飲食同一支払」を求める管理職の悲痛な叫び
SNSで話題の「忘年会スルー」。「高いお金を払ってわざわざ上司の自慢話に付き合いたくない」という若年層のコメントが目立つ。一方で、管理職の方でもスルーしたい人が増えているのだとか。スルーしたいのは管理職も同じ?経営コンサルタントの横山信弘氏が斬る。 - 2021年の忘年会、「参加未定」が4割 参加しても良いと思う条件は?
日本フードデリバリーが、運営する「くるめし弁当」の会員を対象に2020年と21年の忘年会に対する意識調査を実施した。 - テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た
テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。 - 社員に「自己犠牲による忠誠」を強いる時代の終焉 「5%」がもたらす変化とは
企業が社員に「自己犠牲」を強いる時代が終焉を迎えつつある。背景にあるのは、企業と働き手の間にあるパワーバランスの変化だ。筆者は「5%」という数字に目を付け、今後の変化を予想する。 - それ、本当にブラック企業? 日本社会に誤って広がる「ホワイト企業信仰」が迎える末路
「ブラック企業」というワードの一般化に伴い、あれもこれもブラックだと指弾されることも。筆者は、そんな風潮に警鐘を鳴らす。そもそも「いい会社」って何だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.