いい忘年会・悪い忘年会 まだまだ「忘年会賛成派」がいなくならない理由:「酒頼み」のコミュニケーションでいいのか(3/3 ページ)
忘年会シーズンとなったが、コロナ禍では大々的に実施する企業も少なさそうだ。行きたくない人はホッとする一方、「行きたかったなあ」と嘆く人も一部いるのでは。今回は、そんな双方の意見を見つつ、忘年会の今や、今後あるべき組織コミュニケーションを探る。
では、どんな忘年会であれば価値があるのだろうか。リアル会合として実施するのであれば、少なくとも、肯定派がポジティブに感じている要素である「自由参加」「欠席しても何ら査定に影響しない」「全ての費用は会社持ち」「参加社員に余計な負担やプレッシャーをかけず、純粋に楽しんでもらう」かつ「勤務時間扱い」にすべきであろう。また、社員の慰労目的であれば、慰労する側の上司・管理職層は自分たちが楽しむのではなく、奉仕する側に回らなければならないはずだ。そうでなければ、忘年会という名の単なるパワー&アルコールハラスメントにすぎないといえる。
社員満足度向上や慰労を本気で意図しているのなら、筆者のおすすめは「会社負担の豪華ランチ会」である。「夜の宴会と同じ値段で相当いい店に行ける」「就業時間内で完結。プライベートに差し支えない」「ダラダラ延長の心配もナシ」ということで、実践企業ではおおむね参加者のエンゲージメントが向上している。
「酒」頼みの慰労でよいのか
そもそも「酒が入るからこそ本音のコミュニケーションができる」のではなく、「アルコールを介さなくても、普段から本音でコミュニケーションがとれる」組織を目指さなくてはいけないし、上司自身が部下から「あの人とコミュニケーションをとりたい」と思わせるくらい、魅力的な存在でなくてはいけないのである。
果たして、世の中多くの組織では、忘年会や組織内コミュニケーションに対してそこまで本腰で向き合っているのだろうか。真の意味での「慰労」は、そもそも慰謝するだけの「労」を社員に負わせない職場環境を実現することだと考えている。役職の上下は関係なく、お互いフラットに伝えたいことをいい合える雰囲気。魅力的な、尊敬できる上司とコミュニケーションが円滑にとれ、生産性高い仕事ができ、自然にモチベーションが湧いて出てくるような環境こそ、最高の「慰労」といえよう。
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