今年一番売れたクルマは? ビッグヒットの裏にあるカラクリ:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(2/3 ページ)
2021年がもうすぐ終わりになろうとしています。この原稿を手掛ける12月上旬では、まだ1年間の集計は出ていませんが、今年のベストセラーカーは、ぼぼ決まりでしょう。それは、トヨタの「ヤリス」です。しかし、今回のヤリスのビッグヒットには、あるカラクリがありました。
ビッグヒットのカラクリ
しかし、クルマの出来が良いだけでは、年間ベストセラーの座を獲得することは困難です。今回のヤリスのビッグヒットには、あるカラクリがありました。それが「ヤリスクロス」の存在です。
ヤリスクロスは、ヤリスの発売に遅れること約半年となる20年8月末に発売となったコンパクトSUVです。名前からも分かるように、ヤリスとは同じプラットフォームを使っており、兄弟車とも派生モデルと呼んでいい存在です。そして、そのヤリスクロスの販売台数は、ヤリスとしてカウントされているのです。つまり、販売ランキングの数字は、コンパクトカーのヤリスと、SUVのヤリスクロスの2モデル合計からなっているのです。
そして、重要なのは、「今はSUVの人気が急上昇中」だということです。
どういうことかといえば、ヤリスクロスが思いのほか、たくさん売れているのです。
まず、初めて年間ランキング1位を獲得した20年でいえば、ヤリスクロスは20年8〜12月の4カ月だけで約3万3000台も売れています。ヤリス全体の20年の販売は12万1766台ですから、ヤリスクロスを除く、コンパクトハッチバックのヤリスだけの販売は9万台弱。この数字だけだと、なんとヤリスの順位は1位ではなく、4〜5位になってしまいます。そのかわりに1位になるのが、年間約12万6000台を売った、コンパクトSUVのトヨタ「ライズ」でした。
つまり、ヤリスとヤリスクロスが別々であれば、ライズがトップになっていたのです。
そして21年はどうかといえば、ヤリスクロスの1〜11月の販売台数は約9万4550台(トヨタ調べ)。19万6020台というヤリス全体の50%近くを占めています。いってみれば、ヤリスは上手に人気のSUVを身内に取り込んだことで、年間販売ランキング1位の座を獲得することができたのです。
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