株価低迷でも年収4500万円、好待遇維持するテンセントの狙い:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)
テンセントが、従業員の4分の1に対して1人あたり116万円の株式報酬を付与すると発表した。またSNSへ流出した同社社員の収入明細によれば、税引き後の今年の年収は約4500万円だったという。今回はテンセントのほかアリババ、バイトダンス、シャオミファーウェイ、シャオミなどの報酬や福利厚生、労働の実態などを紹介する。
平均年齢30歳、年収は1700万円
中国のメガIT企業は高給と激務で知られる。通信機器大手のファーウェイは一定期間働いたら「退職金代わり」の株式が付与され、日本円にして年間数百万円の配当を受け取れるという。ただし、徹底した成果主義のため会社に泊まり込みで働く「マットレス文化」も有名だし、「45歳定年制」といわれるように、数回続けて評価が目標を下回ったら解雇されることもある。
テンセントやTikTokを運営するバイトダンスなど他社も似たり寄ったりだ。
テンセントの21年4-6月決算で公表された報酬総額を従業員数で割ると、平均月収は7万8500元(約140万円)、年収にすると94万元(約1700万円)。しかも社員の平均年齢は30歳前後と若い。
11月下旬には、テンセントのある社員の収入明細がSNSで流出した。09年に入社し、勤続12年目の社員の今年の年収は、税金を引かれた手取り額で251万元(約4500万円)となっている。
テンセントの元社員を名乗るアカウントによると、年収が流出した社員は12年の入社時から大ヒットゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」の開発プロジェクトチームに在籍。数百人のチームで毎年数百億元の売り上げを上げており、1人当たりに換算すると30〜50億円の売り上げがあることから、数千万円の年収は当然だという。
なお王者栄耀は、中国政府系メディア・経済観察報が今年8月に名指しで批判記事を掲載。これをきっかけにテンセントの株価が暴落している(筆者記事参照)。
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