アラブ首長国連邦の週休2.5日制、真の狙いは働き方改革ではない:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
ドバイやアブダビといった7首長国によって構成されるアラブ首長国連邦(UAE)は、2022年1月1日から週休2.5日制度を導入する。月曜日から木曜日までは1日8時間、金曜日が4.5時間勤務となる。
ドバイやアブダビといった7首長国によって構成されるアラブ首長国連邦(UAE)は、2022年1月1日から週休2.5日制度を導入する。月曜日から木曜日までは1日8時間、金曜日が4.5時間勤務となる。
実は、UAEが週休を変更したのは今回が初めてではない。UAEは1971年に「金曜日」を週末と定義して以降、99年には「木曜日・金曜日」と週末の定義を変えている。その後、06年に「金曜日・土曜日」へと改めたうえで21年の「金曜日午後・土曜日・日曜日」へ移行するのだ。そのため、UAEにとっての「週末」はかなり柔軟という経緯があることをまずは押さえておきたい。
国際化意識、明治日本との共通点も
今回の週休2.5日の導入について、日本国内では主に国民のワークライフバランスを改善し、生産性を高める「働き方改革」という文脈で語られることも多い。しかし、真の狙いは別のところにあると考えられる。
それは、UAEの制度を国際標準に近づけることで、ビジネス市場での存在感を高めていくことだ。
そもそも、UAEをはじめとしたアラブ・イスラム教国家の多くは、公の週末を金曜と土曜日と定義している。そもそも日曜が休日という感覚は、キリスト教の礼拝日がルーツであり、宗教観によって「週末」の捉え方にはもともと多様性があるものだ。
日本ももともとは日曜日が週末というわけではなかった。明治時代以前の日本は、一六日(いちろくび)という、毎月下ひと桁に1または6がつく日を休日とする慣習があった。曜日ではなく日付に依存した休日体系を採っていたことから、土曜日午後と日曜日休日が定着していた欧米と交易する際、休日のズレによる不都合が増加したことがきっかけで、1876年から日本も欧米と同じ休日に変更したという経緯があるのだ。
このような経緯を考えると、UAEの週休2.5日への移行は、どちらかといえば今や国際標準となっている土日休日に制度を近づけることによってビジネス上のアドバンテージを確保することが真の狙いではないか。ただし、それでも金曜日の午後が休日となるのはやはりイスラム教国家だ。教義上、金曜日は神聖であり、礼拝日と定められていることから午後については休日としたとみられる。
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