2021年乗って良かったクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)
年末恒例の乗って良かったクルマだが、2021年の新型車のデビューは、マツダは1台もなし、スバルはBRZがあるけれども、来年のエントリーにしたい。もちろんGR86も同じ。スバルWRX S4は公道で乗っていない。結局は、トヨタのMIRAIとランドクルーザー、アクアとカローラクロスというトヨタ大会になってしまった。どれも数日以上借り出して、1000キロくらいは走ってきた。
強いていえば、スズキのワゴンRスマイルがあるが、あれは自動車評論と関係ない世界のクルマだ。軽自動車でスーパーハイトワゴン以外でどうしてもスライドドアじゃないと嫌だという人が、ダイハツ・ムーヴ・キャンバスとスズキ・ワゴンRスマイル各1台しかない中から選ぶもの。
自動車評論的にいえば、重くて背丈を上げないと成立しないスライドドアはほとんど必要悪みたいなものなので、可能な限り避けた方がいいといいたい。ウォークインの都合で屋根が高くなり、重心が上がって、結果ばねをどうしても硬くしなくてはならず、家族のクルマとしては乗り心地が悪い。重い上にボディ剛性が下がるのでハードウェア的には良いことがない。だからメリットとデメリットを比べれば、普通のワゴンRにしたら? というしかない。「そういう細かいアラは、もう全部どうでもいいからスライドドアLOVE」という人には自動車評論家は役に立てない。マーケットで好きなものを選んでいただくお話で、筆者が口出しすべきことではない。
結局は、トヨタのMIRAIとランドクルーザー、アクアとカローラクロスというトヨタ大会になってしまったわけだ。どれも数日以上借り出して、1000キロくらいは走ってきた。
さて、それでは4台の総評から。トヨタのMIRAIとランドクルーザーは、どちらも唯一無二のもの。どちらも誰にでもお勧めできるものではないけれど、グローバルなモビリティにとってこの2台が担うものは大きい。という意味で、代替不能な価値を持っている。
一方でアクアとカローラクロスは、2台とも徹底した国民車である。尖(とが)ったところはひとつもないが、その代わり、ベーシックな高性能を広く庶民に享受させてくれる。社会的意義が極めて大きい。トヨタのTNGA世代プラットフォームの普及が進んだことで、低重心の走りの良さみたいなものを主眼とするだけでなく、もっと幅広くクルマの価値を捉えられるようになった。という意味ではTNGA第2楽章が始まった感がある。
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