2021年乗って良かったクルマ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/8 ページ)
年末恒例の乗って良かったクルマだが、2021年の新型車のデビューは、マツダは1台もなし、スバルはBRZがあるけれども、来年のエントリーにしたい。もちろんGR86も同じ。スバルWRX S4は公道で乗っていない。結局は、トヨタのMIRAIとランドクルーザー、アクアとカローラクロスというトヨタ大会になってしまった。どれも数日以上借り出して、1000キロくらいは走ってきた。
トヨタ MIRAI
今更な説明だが、MIRAIはFCEV(燃料電池車)である。初代と比べて、クルマの出来は劇的に向上した。水素供給の問題がないなら、諸手を挙げて推薦したいくらい出来が良い(記事参照)。
リニアリティや低速トルクといったBEV(バッテリー電気自動車)の持つ良さを全て持った上に、BEV比で車両重要が圧倒的に軽い。BEVよりシステム重量の軽いICE(内燃エンジン)車との比較ですら、例えば動力的に同等であるV6の3.6リッターあたりのガソリンパワートレインと比べても軽いのだ。トランスミッションがないことが大きい。
タンクでも有利だ。750キロの航続距離をベースに、エネルギー貯蔵能力をそろえて重量を見れば、バッテリーなら確実に重量が300キロオーバーになるのに対して、満タンの燃料はたった5.6キロ。カーボン製のタンクも軽いので、〒マーク型に配置される3本と燃料を合わせても20キロ程度だ。
カムリのタンク容量が50リッターだから中身のガソリンだけで約37キロある。タンク重量は分からないが、それを合わせれば50キロでは済まないのは間違い無い。もっともこっちは航続距離が1000キロを超える。つまりMIRAIのシステムは動力性能に比して、現在最も軽い。
しかも、運転感は群を抜いて良い。特にクルマ屋が作ったものらしく、ピーク値特化型ではなく、ハンドルもアクセルもブレーキも過渡領域の作り込みがよくできている。挙動の麗しさを堪能できる価値がそこにある。
4月に追加されたハンズフリー可能なADAS(先進運転支援システム)のアドバンスドドライブの出来も、かなり未来的で、高速道路の長距離運転支援システムとしては最先端にある。どこのどのシステムでもそうだがまだ完璧とはいえないが、現時点でいえば最も自動運転に近づいたシステムといえるだろう。
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