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「残業ゼロ」を目指して、固定残業制を導入 いかにして不公平感をなくしたのか:事例研究(2/4 ページ)
固定残業制とは、会社が一定時間の残業を想定して、実際の残業時間を計算せずに、固定分の残業手当を支払う制度。導入している企業の事例を紹介する。
技術系ベンチャー企業
共同技研化学株式会社は、多機能性フィルム、粘着テープの製造や粘着加工などを行う技術系のベンチャー企業である。粘着テープというと、包装用などに使われる汎用接着テープを思い浮かべるかもしれないが、そうした単機能の製品ではない。
粘着性、接着性、光透過性、電磁波シールド性、ガスバリヤー性、導電性、熱伝導性、放熱性などの多機能膜をつくる技術を駆使した最先端素材を、住設機器、自動車内装、電子通信機器用などに提供している。
例えば、窓枠などに使われる疎水型防水の素材や施工に関しては、現在同社が国内シェアトップである。
同社では最近、注目を集めている5GスマホのFPC基板材を手掛けるようになった。5Gの素材には、高絶縁性、低吸湿性、高ガスバリヤー性と高い強度が必要だが、現在そうした要求に応えるのは同社の液晶ポリマーフィルムが最適とされ、業績は順調に伸びている。
「残業ゼロ」を目指す
「当社の固定残業制は、残業手当を支払いたくないために導入したものではありません。会社として定時退社を推進しており、それを順守させるための施策なのです」と説明するのは、同社の濱野尚吉社長だ(以下、発言は同氏)。
社員80名のうち、50名程度が製造部門に所属し、25名程度が営業部門、管理部門に所属する。
同社では、創業当初から社員を定時に帰らせることが社の方針だった。そのため、社員一人一人の仕事の負荷を均一にするため、仕事量を見ながら人員を配置。余裕を持ってこなせるように仕事量を調整し、「残業ゼロ」を基本とするようにした。
ところが、この「残業ゼロ」が現実には難しかったのである。
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