「仕事が楽しい」の“楽しい”とは何か 「楽しい仕事」とはどんな仕事なのか:「快」と「泰」のキャリア考(4/6 ページ)
ひとくちに「仕事が楽しい」と言っても、それが「情」寄りで楽しいのか、「意」寄りで楽しいのか性質の違いがあります。生産年齢者として50年、人間として100年生きるとき、この「情」ベースから「意」ベースへ、「快」の追求から「泰」の志向へのマインド・シフトともいうべき意識転換が重要ではないでしょうか。
歳を重ねるとともに「仕事の楽しさ」の質が変わってくる
私個人の話をしますと、20代から30代前半は、仕事をスポーツのようにとらえていました。そのため販売個数や市場シェアなどの数値を追いかけ、目標をクリアすることを面白がっていました。競合他社に勝てば喜び、負ければ悔しがる。いい成績をあげて社内で評価が高まればうれしい、評価が下がれば落ち込む。そういった上がり下がりの波が、自分の仕事意欲の刺激剤でもありました。振り返れば、「情的な楽しい」がベースの日々だったように思います。
ところが30代半ば過ぎからはそうしたスポーツ的な激しい仕事の繰り返しに飽きがきたり、疑問がわいたりして、趣味生活を重視する時期がきます。仕事はほどほどに抑え、趣味の充実に走ります。趣味からもいろいろな楽しみや刺激を得ましたが、やはり消費や所有からくる喜びは「情」寄りのものです。長続きしませんし、肚ごたえが足りません。
そんな中で、自分は自分の能力と意志を使って、世の中に何を届ける存在になりたいのかという問いをつねに投げかけていました。そんなとき、運命的な言葉に出合ったのです。それは中国の古いことわざでした――。
一年の繁栄を願わば、穀物を育てよ。
十年の繁栄を願わば、樹を育てよ。
百年の繁栄を願わば、人を育てよ。
「そうだ、自分が献身したいのは人の心を育む仕事ではないか。そして自分なりに考える教育の新しい方法・表現を世の中に届けてみたい!」と、一筋の光が見えました。その瞬間以来、仕事が貢献的・使命的な活動に切り替わり、「意的な楽しい」を志向するようになったのです。サラリーマンをやめて個人自営業になり、経済的には毎年ドタバタの奮闘が続きますが、心は「泰」となり、健やかな仕事生活が続きます。
関連記事
- 「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
「オレが若いころは……」「マネジメントとは管理することだ」といったことを言う上司がいるが、こうした人たちは本当にマネジメントができているのだろうか。日本マイクロソフトで業務執行役員を務めた澤円氏は「そうしたマネージャーは、その職を降りたほうがいい」という。なぜかというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか
日本経済の復活がうかがえるような、データがなかなか出てこない。先進国と比べて、GDP増加率は低く、賃金も低い。多くのビジネスパーソンは懸命に働いているのに、なぜパッとしないのか。筆者の窪田氏は「日本社会のシステムがブラック企業化しているから」と見ていて……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.