不正転売について考えてみた:どのように転売ヤーにとっての魅力をなくすか(4/5 ページ)
メルカリをはじめとする「二次流通業者」の存在感が大きくなっている。 しかし、残念ながら二次流通業と消費者との関わりポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面もある。その代表が「不正転売」だ。本レポートでは、メルカリとUSJの転売対策など、企業の事例を取り上げる。
3――どのように転売ヤーにとっての魅力をなくすか
ここまでは仲介業者であるメルカリによる不正転売に対する水際対策を紹介したが、第一次消費者に商品を手渡す小売り側も不正転売の防止に向けて取り組んでいる。例えばヨドバシカメラ マルチメディア京都(京都ヨドバシ)では2019年6月24日から、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のフィギュア「METAL BUILD エヴァンゲリオン2号機」の予約販売が開始された際に、「商品名を正確に言えないと販売しない」方針を打ち出し、外国人転売業者に対策を行った(※7)。
商品の定価は2万4200円に設定されており、いわゆるにわかファンにとっては敷居の高い値段であることから、そのグッズを購入したいと思うのは真に新世紀エヴァンゲリオンが好きなファンに絞られてくる。そのため、真に新世紀エヴァンゲリオンが好きなファンならば商品名を言う事ぐらい何ら問題のないはずなのに、その商品の名前が言えないということは、購入者自身がその商品には興味がないことを証明してしまうこととなる。
この措置は海外の二次流通業に商品が流れることを防ぐことにあったため、商品名が言える=日本語が喋れるというスクリーニングが目的にあった。そのため、この対応に対しては人種差別的だという批判もあったようだ。そこで、外国人でもこの商品が欲しい消費者もいるため、店側は母国語でもいいから「新世紀エヴァンゲリオン」のいいところを語ってみるよう尋ねたという。
このような方法で店側が購買者を選ぶことになると、例えば子どもや孫にお使いを頼まれた場合、頼まれた人は商品名はおろか作品の感想も言えないことから、どんなに依頼者が欲しくとも、購買を代行する者自身が興味がなければ手に入れることができないという事態が発生する。また、この対応では、日本人の転売ヤーに対する対応としては不十分であり、国内における転売には目を瞑る行為となる。この対応が最善の策だったのかここでは筆者は明言しないが、店側もなんとか本当に商品を欲しいと思っている消費者に商品が渡るように悪戦苦闘していることが分かる。
他にも玩具小売店の「おもちゃのミッキー」では2021年9月8日にガンダムのプラモデル(ガンプラ)が入荷した際に、「転売対策として、ガンプラ等一部の品薄商品をお買い上げのお客様にご購入時に内装開封と一部ランナーのカットをお願いいたしております」と告知した(※8)。「ランナー」とは、プラモデルのパーツ同士をつなげる枠のことであり、通常組み立てる場合は必ずカットする部分である。しかし、転売ヤーにとってはその場でランナーをカットした場合、転売用に購入したそのガンプラは、新品ではなく中古品になってしまうため、二次流通業で販売する際の価値が下がってしまうのである。
同様にヨドバシカメラ梅田店では、ガンプラの箱の裏に店舗印を捺印する措置が取られており、いかに一般の消費者にとってデメリットが少なく、かつ転売ヤーにとっての魅力をなくすことができるか、試行錯誤されている。
(※7)FNNプライムオンラインめざましテレビ「商品名言えない外国人には売らない」京都ヨドバシの転売防止策に賛否(2019/06/26)
(※8)ガンプラファン絶賛「画期的」な転売ヤー対策 編み出したおもちゃ屋に聞いた(2021/09/08)BIGLOBEニュース
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