「昆虫食の自販機」が全国的にじわじわ増えているワケ:月90万円稼いだ自販機も(1/3 ページ)
全国的に「昆虫食自販機」がじわじわ増えているらしい。「高たんぱく」「食糧危機を救う」などの文脈でメディアに取り上げられているのを見るが、なぜ昆虫食自販機が増えているのだろうか? 実際に運営する事業者に話を聞いたところ、ビジネス的な「うま味」が見えてきた…….。
昆虫食しか売っていない自動販売機が全国的にじわじわ増えているという。確かに東京でも渋谷区の住宅街で「昆虫食はじめました」というのぼり旗と自販機を見たことがある。実際、複数の企業が昆虫食を扱う自販機の設置台数を増やしている。
1991年に発表された「食用及薬用昆虫に関する調査」によると、日本でも60年ごろまでは、55種類の昆虫が食べられていたという。しかし、85年には6種類までその数を減らした。現在は養殖ではあるものの、少しずつ食用の昆虫の種類が増えているという。
昆虫食について「食料危機を救う」「未来のスーパーフード」「高たんぱく」などの文脈でメディアで目にする頻度は増えたような気もする。なぜ昆虫食自販機が全国的に増えているのか、実際に自販機を運営する事業者に話を聞いてみた。
飲料系自販機ビジネスの限界
コインロッカーを設置する事業を手掛けるティ・アイ・エス(東京都台東区)は、全国6カ所で昆虫食自販機を展開する。東京に4カ所で、上野の商店街「アメ横」に2カ所と中野、吉祥寺の商店街だ。加えて、静岡県に2カ所で市内のアパレル店の駐車場と藤枝駅に設置している。同社の昆虫食自販機の月の平均売り上げは20万〜40万円だが、アパレル店のものは90万円売り上げた月もあるという。
昆虫食自販機に目を付けた理由について、同社の昆虫食自販機運営事業部 近藤俊一部長は「自販機ビジネスに変化が起こっています。飲料を扱う自販機市場は飽和状態で、冷凍食品やラーメンなど飲料以外の商品を売る自販機が増えています。この流れに、話題性の高い『昆虫食』を掛け合わせることで、新しい事業を確立できると考えました」と話す。
ラインアップは25種類ほどで、入れ替え頻度は、売れ筋商品を残して月1回程度だという。甘い商品が売れる、大きい昆虫が売れる、小さい昆虫が売れるなど地域特性を踏まえて入れ替える。一番売れている商品は、5種類の昆虫が入った「Mixed Bugs」(1500円)。複数種類の昆虫を一気に楽しめるのが人気の理由だ。
現時点で昆虫食を購入する人のモチベーションとしては、興味本位が多いという。ただ、実際に自販機の前で実物を目にすると「うっ」とためらってしまう人もいるようだ。「何を買っていいか分からない」という人のために、同社は「お楽しみCAN」(1000円)も販売している。
お金を入れると、1000円以上の商品がランダムで出てくる。「ただ昆虫食が買えるだけの場にしてしまうと、購入をためらう人もでてきます。仕掛けがあることで購入する人が増えます。楽しみを付与することで、昆虫自販機がただのエンタメとしてではなく、食料危機などの問題に目を向けるきっかけになると考えています」(近藤氏)
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