「穴が開いたら新品と交換」 ”永久交換保証”の靴下ビジネス、赤字にならないの?:人生最後の靴下になる?(1/2 ページ)
靴下メーカーのグレン・クライドでは、”永久交換保証”付きの靴下を販売している。靴下には消耗品のイメージがあるが、永久交換を保証してビジネスが成り立つのか。社長の橋本満氏に「永久交換保証」の秘密を聞いた。
靴下と聞くと「3足1000円ほどで販売されている消耗品。ゴムが緩んだり穴が開いたりしたら買い換えるもの」と思うかもしれない。
ところが、「永久交換保証 つま先、かかと、足底部分に穴が開いたら新品と交換します」という採算度外視とも思える保証を付けた靴下を販売するメーカーがある。東京都文京区根津に本社兼ショールームを構えるグレン・クライドだ。
グレン・クライドの橋本満社長は「4年ほど前に取引先に紹介されて、コーデュラと呼ばれる特殊なナイロンの存在を知った。この糸はアウトドア用のバックパックにも使われるほど耐久性が高い。この糸を使って靴下を作ってみたくなった」と永久交換保証の靴下「LIFE LONG」ブランドの開発理由を説明する。2017年にクラウドファンディングサイトMakueakeで販売を開始した際は、目標金額達成率400%を超える反響があったという。
一般的な靴下の場合、カケンテストセンター(東京都中央区)などが実施している「摩耗試験 JIS L 1096 F-1(スチールブレード法)」(生地に荷重をかけて摩擦子でこするテスト)で500回程度をクリアすれば商品として市場に出せるという。大手メーカーの製品でも1000回ほどだ。
一方、生地の40%にコーデュラを使用しているLIFE LONGの靴下は桁違いの回数をクリアしている。「LIFE LONGの靴下は3万回でも穴が開かなかった。交換の保証期間は3年でも5年でもよかったが、ブランディングの意味で永久保証にした」(橋本社長)
LIFE LONGブランドとして販売されているのは、薄手の「永久交換保証ビジネスソックス」(2200円)と、厚手の「永久交換保証ソックス」(2200円)、くるぶし丈の「永久交換保証ショートソックス」(1980円)の3種類。3足1000円の靴下と比べると7倍弱の価格だ。
3足1000円の靴下を愛用している筆者の経験では、靴下の“寿命”はせいぜい2〜3年。それくらい履くと、つま先に穴が開いたり、かかとが擦り切れたりしてしまう。たとえ価格が7倍でも「永久交換保証」と言われると「これで一生、靴下を買い足さなくても済むなら……」という気になってくる。
そもそも2000円前後で販売している靴下に永久交換保証を付けてビジネスになるのか。橋本社長は「永久交換保証はブランドの宣伝にはなっても、ビジネスのリスクにはならない」と自信ありげだ。どういう仕組みなのか?
関連記事
- ランドセルが、約90%軽くなる「棒」とは? 購入予約数は約2000本に
ランドセルの重量化が腰痛や肩こりなどを引き起こす「ランドセル症候群」が小学生の間で広がっているという。そんな状況を改善すべく、大学生と小学生が協力して、ランドセルを約90%軽くする「棒」を開発した。棒でどうやってランドセルが軽くなるのかというと…… - ”おじさん上層部”の反対を押し切って発売 約2年で44万個売れた「プリントグラス」のヒットの理由とは?
創業200年の老舗ガラスメーカーが復刻させた、昭和レトロなデザインのプリントグラスが爆発的に売れている。累計販売数は2019年10月の発売から約2年で44万個を突破した。昨年の1月からは7カ月連続で月次の最高販売数を更新しているという。なぜ今、復刻商品が売れているのか? その秘密に迫る。 - 焼き立てパンは置いていません! パン屋の”当たり前”をくつがえす「時をとめるベーカリー」は、なぜ生まれたのか?
パン屋の魅力といえば、焼き立ての香りが充満する空間でおいしそうにテカテカと光るパンを選ぶことといっても過言ではないだろう。神奈川県・瀬谷駅直結のパン屋「時をとめるベーカリー」はそんなパン屋の常識をくつがえす。「うちには焼き立てパンは置いていません」。どういうことなのだろうか? パン屋の魅力をとっぱらった店はなぜ生まれたのか? - 「ごめん、売り切れたみたい」 5時間で完売したシャープの立体型マスクは何がすごいのか?
シャープが発売した「クリスタルマスク」が発売5時間で売り切れて、現在も品薄状態続いている。一時は高騰していたマスク市場も落ち着きを取り戻し、マスク需要も落ち着きを見せていたが、なぜここまで売れているのだろうか? - 渋谷の一等地で、コーヒー1杯99円 なぜこのビジネスが成り立つのか?
「安いのは嬉しいけど、安すぎるとちょっと不安」という心理に陥ったことはあるだろうか?渋谷の地下街で「コーヒー1杯99円」というカフェの看板を見たときにそう思った。なぜこのビジネスが成り立つのだろうか?運営会社に話を聞いたところ……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.