「穴が開いたら新品と交換」 ”永久交換保証”の靴下ビジネス、赤字にならないの?:人生最後の靴下になる?(2/2 ページ)
靴下メーカーのグレン・クライドでは、”永久交換保証”付きの靴下を販売している。靴下には消耗品のイメージがあるが、永久交換を保証してビジネスが成り立つのか。社長の橋本満氏に「永久交換保証」の秘密を聞いた。
なぜ永久交換保証でビジネスが成り立つのか?
というのもグレン・クライドの売り上げは、大手衣料品メーカーのOEMが4割ほどを占める。そのほか輸出が3割で、店舗での売り上げは3割にも満たない。しかも、店舗ではユニセックスブランドの「CHUP(チャップ)」や女性向けの「Atelier GLEN CLYDE(アトリエ・グレン・クライド)」、耐久性・希少性の高い綿を使用した「Sea island cotton(シー・アイランド・コットン)」なども扱っており、LIFE LONGの売り上げが全体に占める割合は1割程度にすぎないという。
「LIFE LONG」の価格は交換率5%でも利益が出せる設定にしてあるとのことだが、2018年の販売開始から4年弱が過ぎた現在の交換率は1%に届かないと橋本社長は明かす。交換が面倒くさい、プレゼントの場合にわざわざ交換に来ないなどの理由が考えられるという。
とはいえ、これから5年、10年とたつ間に穴が開いた靴下の交換に来る人が増えてくるのは目に見えている。しかし橋本社長は「たとえ交換率が想定の5%を超えるようなことがあっても永久交換保証をやめるつもりはない」と言い切る。
確かに、一度始めてしまったサービスを撤回するとなればブランド、引いては会社の信用を失うことにもなりかねない。「永久交換保証」をうたい続けるため、グレン・クライドでは従来品よりさらに耐久性の高い靴下の開発に取り組んでいるという。
LIFE LONGブランドの交換の条件と交換方法は、同社の公式Webサイトによると以下のようになっている。
【交換条件】
- 該当の商品に穴が空いた場合は、1足に対して新品1足と交換
- 該当の商品が穴が空く前のスケスケの状態(メッシュ状)になった場合は、メッシュ状の靴下3足に対して新品1足と交換
【交換方法】
- 交換条件を満たした商品を弊社直営店(GLEN CLYDE SOCK CLUB TOKYO)にお持ち込みいただくとその場で交換いたします
- 公式Webサイトの「交換お申し込みフォーム」より交換の申し込みを行う場合は交換対象となる靴下をお送りいただいたのちに(送料はお客様負担)弊社から新品の靴下をお送りいたします。(送料は弊社負担)
ターゲットはビジネスパーソンだったが、実際に買いに来たのは?
では、どんな人たちがLIFE LONGブランドの靴下を買っているのか。ブランドのイメージからは普通の会社員を想定しているように思えるが、実際は違う層の購買が多いという。
「想定は会社員だが、実際に交換に来るのは『安全靴』を履くような職業の人がほとんど。交換のついでに10足くらい追加でまとめ買いをしていくこともある」と橋本社長。また、女性がプレゼント用に買っていくケースも多いという。取材中にたまたま店舗を訪れた女性がLIFE LONGブランドの靴下を手に取っていたので話を聞いてみたところ、やはりプレゼント用とのことだった。
LIFE LONGブランドは男性用となってはいるものの、カラーバリエーションが豊富なため、自分用に購入する女性もいるようだ。「今後は女性向けにサイズの小さいタイプも展開したい」と橋本社長は話す。
取材に当たって筆者も自分用に2足、永久交換保証ソックスを買ってみた。いつか、それらに穴が開いたときは交換対応のレポートができればと思う。
関連記事
- ランドセルが、約90%軽くなる「棒」とは? 購入予約数は約2000本に
ランドセルの重量化が腰痛や肩こりなどを引き起こす「ランドセル症候群」が小学生の間で広がっているという。そんな状況を改善すべく、大学生と小学生が協力して、ランドセルを約90%軽くする「棒」を開発した。棒でどうやってランドセルが軽くなるのかというと…… - ”おじさん上層部”の反対を押し切って発売 約2年で44万個売れた「プリントグラス」のヒットの理由とは?
創業200年の老舗ガラスメーカーが復刻させた、昭和レトロなデザインのプリントグラスが爆発的に売れている。累計販売数は2019年10月の発売から約2年で44万個を突破した。昨年の1月からは7カ月連続で月次の最高販売数を更新しているという。なぜ今、復刻商品が売れているのか? その秘密に迫る。 - 焼き立てパンは置いていません! パン屋の”当たり前”をくつがえす「時をとめるベーカリー」は、なぜ生まれたのか?
パン屋の魅力といえば、焼き立ての香りが充満する空間でおいしそうにテカテカと光るパンを選ぶことといっても過言ではないだろう。神奈川県・瀬谷駅直結のパン屋「時をとめるベーカリー」はそんなパン屋の常識をくつがえす。「うちには焼き立てパンは置いていません」。どういうことなのだろうか? パン屋の魅力をとっぱらった店はなぜ生まれたのか? - 「ごめん、売り切れたみたい」 5時間で完売したシャープの立体型マスクは何がすごいのか?
シャープが発売した「クリスタルマスク」が発売5時間で売り切れて、現在も品薄状態続いている。一時は高騰していたマスク市場も落ち着きを取り戻し、マスク需要も落ち着きを見せていたが、なぜここまで売れているのだろうか? - 渋谷の一等地で、コーヒー1杯99円 なぜこのビジネスが成り立つのか?
「安いのは嬉しいけど、安すぎるとちょっと不安」という心理に陥ったことはあるだろうか?渋谷の地下街で「コーヒー1杯99円」というカフェの看板を見たときにそう思った。なぜこのビジネスが成り立つのだろうか?運営会社に話を聞いたところ……
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.