【まとめ】無人店舗元年! 2021年にはどのような店舗がオープンしたのか?:売れっ子定員も登場(3/3 ページ)
2021年に盛り上がったビジネスの1つに「無人店舗」が挙げられるだろう。コロナ禍で対面接客が減らせたり、人件費削減につながったりと多くの利点があり、DX文脈でも注目を集めていたように感じる。今年、筆者が取材した3つの無人店舗を紹介していく。
無人の家電店では、何が売っているのか?
無人の家電店「ゴジユウニ」があるのは東京都大田区の蒲田だ。木材が使われたスタイリッシュな外観で、一見家電店には見えないものの、店内には複数種類の家電が置かれている。
主には、電子レンジ、冷蔵庫(60〜140リットル)、洗濯機(3.8〜7キログラム)、テレビ(24〜32インチ)の4種類。取材時の価格は、電子レンジが5500円、冷蔵庫と洗濯機が1万1000円、テレビが1万6500円と製品ごとに統一されていた。これらの白物家電だけでなく、取材時にはドライヤーが660円で販売されていた。
同店のビジネスモデルはシンプルで、個人やコロナ禍で廃業した宿泊施設、買取専任の事業者から買い取った家電を販売している。売れ行きは好調で、オープン当初は月に1回程度と予測していた製品の搬入も取材時は週2で対応しないと間に合わない状態だという。
そんなに好調なら「冷蔵庫や洗濯機以外にも美容家電など売れそうな家電を置けばいいのに」と思うかもしれない。しかし、ラインアップを増やせない理由がある。「説明不要な家電しか置けない」のだ。無人店舗のため、最新の美容家電やユニークな製品を置いても使い方を説明する店員がおらず、売り上げにつながらないという考えだ。
その他にも「家電の買い替え頻度ってそこまで高くないのでは?」という疑問も当然生まれる。「蒲田」という土地柄が解決してくれる。蒲田駅は20年の乗降客数ランキングで「恵比寿」「吉祥寺」などの東京の人気駅を抑え19位にランクインしている。また、駅周辺は商業施設や飲食店が充実していることに加え、大学や大学病院も存在する。新生活を始める大学生や単身赴任のビジネスパーソン、飲食業を営む人など白物家電を必要とする潜在ターゲットが多く暮らす街なのだ。
ラインアップの少なさなどの課題は見られるものの、月の平均売上は40万〜50万円で、同社が運営する有人のリサイクルショップと比較して、かなり効率的な経営ができているという。防犯対策も、店内外合わせて7つのカメラを取り付けることで対応している。
家電は決して安い買い物ではない。「製品情報やスペックをしっかりと理解し、納得してから購入したい」というニーズがあるモノを、「無人販売」の形態に当てはめる意外性が新しいビジネスを生み出した。
上記以外にも「本屋」「果物店」「ギョーザ店」「サラダ店」などさまざまな無人店舗がオープンしている。無人店舗の共通点はコストを最小限にし、小規模なスタートでも利益が生まれやすい仕組みを構築できることだと感じる。そうすることで、事業として安定した成長が期待できる。
新型コロナウイルス感染拡大は、外出自粛、消費抑制など多くの弊害を引き起こした。一方で、無人店舗展開には追い風となった。人手不足の解消や人件費の削減、消費者の購買データをマーケティングに活用するなど無人店舗多くの可能性を秘めている。22年も多くの業界で生まれると期待したい。
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