サラリーマンの給料がなかなか上がらない、納得の理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
サラリーマンの給料がなかなか上がらない。世界的に見ても低迷しているので、岸田政権は賃上げをしている企業に“アメ”を与える策を打ち出しているが、効果はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「ない」と見ている。その理由は……。
成長できていない会社
では、具体的にどうするのかというと、先ほど申し上げた「スモールM&A」を国策として強力に支援していく一方で、「最低賃金引き上げ」という両輪を進める方法だ。
補助金をこれだけバラまいても成長できないというのなら、あと残る道は「小さい者同士が集まって強くなる」ということしかない。M&Aによって、中小企業・小規模事業者の成長を促して、規模を大きくして、賃金を上げていくのである。
これは菅義偉前首相が官房長官時代から掲げた「中小企業改革」の一つとして以前から進められていた施策で、着々と結果が出ている。『2021年版 中小企業白書・小規模事業白書概要』(令和3年4月 中小企業庁)に、現状が簡潔にまとめられているので引用しよう。
『事業承継の1つであるM&Aに対するイメージは向上し、件数は増加。売買双方が事業規模拡大を主な目的としている一方、売り手側は雇用維持を目的としている割合が最も高い』
『M&A実施後は多くのケースにおいて譲渡企業の従業員の雇用は維持されており、M&Aは売り手側にもメリットがある』
事業規模拡大もできて、雇用も維持できる。スモールM&Aは、中小企業・小規模事業者にとってまさしく理想的な成長をすることができるのだ。しかし、件数は増加をしているとはいえ、まだまだ日本の賃金を上げていけるほど、スモールM&Aの数は爆発的に増えていない。そこで、この動きをさらに加速させるために「最低賃金の引き上げ」が必要なのだ。
最低賃金を着々と引き上げていけば、従業員に対して常軌を逸した低賃金しか払うことしかできない、経営センスのない中小企業・小規模事業の社長は、市場から退場を余儀なくされる。つまり、会社を畳むか、成長できる同業者などに事業を譲渡・売却するしかない。
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