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山手線の内側2つ分の土地が放出予定? 「2022年問題」は本当に“不動産ショック”をもたらすのか古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

コロナ禍による金融緩和やリモートワークの普及といった追い風もあって、2021年の国内不動産市況は、マンションや住宅を中心に活発となっている。昨年までは住宅用が好調をけん引してきた不動産市況だが、今年はいわゆる「2022年問題」のファーストイヤーであり、一部では不動産価格の大幅な下落がもたらされると心配する声もある。

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山手線の内側2つ分の土地が放出予定

 国土交通省の調べによれば、20年の時点で全国に生産緑地は12100ヘクタール存在するという。山手線の内側の面積がおよそ6300ヘクタール程度といわれていることから、実に「山手線の内側2つ分」の面積の土地が、将来的に不動産市場に放出される可能性があるということだ。


三大都市圏に残る巨大な生産緑地(国土交通省)

 また、今回放出される可能性がある生産緑地のほとんどは、首都圏・大阪・名古屋といった大都市に存在する、1件あたり500平方メートル以上の大きな土地である点も見過ごせない。これらのエリアは近年不動産の価格が高騰しているエリアであることから、ここに大量の不動産が供給されることで不動産価格の下落を招く恐れがある。

 ただし、渋谷区や港区、千代田区といった都市部の中でもさらに中心的なエリアについては生産緑地がほとんど存在しない。「2022年問題」が先読みされていたにもかかわらず港区のタワーマンションなどの価格が21年になっても高い上昇率を記録した背景には、同区が22年問題の埒外(らちがい)であるという安心感もあるのかもしれない。

 しかし、港区に生産緑地がなかったとしても、他のエリアで大きな土地が放出されれば、地主から土地を買い受けた大手のデベロッパーはその広い土地を生かして価格や造形などの点で競争優位性のある物件を売り出すことも十分に可能となる。

 そのため、仮に2022年問題が不動産市況のセンチメントを悪化させることがあれば、生産緑地のないエリアにも影響が波及してくる可能性がある。

 巷(ちまた)では「2022年問題」が発生してくるのは22年4月1日からであるといわれているが、現実的には22年の10月以降から徐々に影響が出てくるものとみられる。なぜなら、不動産の売却までには通常3〜8カ月程度の期間がかかるからだ。2022年問題が本当に不動産ショックをもたらすかを観察するうえでは、このような“タイムラグ”にも注意しておかなければ、2022年問題の影響を過小評価してしまうおそれがある。

 今年の不動産をめぐっては、今回紹介した「2022年問題」という供給面でのマイナスイベントのほか、令和4年度税制改正大綱により住宅ローン控除の割合が従来の1%から0.7%に引き下げられたり、借入残高の上限が引き下げられたりといった需要面での変化も訪れる。そのため、ショックとまではいかないにしても、不動産をめぐる市況冷え込みには一段と注意しておかなければならないだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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