「人口減は技術革新で乗り越えられる」という考え方が、ダメな理由:スピン経済の歩き方(1/5 ページ)
日本の人口減少に歯止めがかからない。『朝日新聞』が試算したところ、政府が想定していたペースよりも7年も早く少子化が進行しているわけだが、この問題はどうすればいいのだろうか。「技術革新でなんとかなる」という考え方もあるが……。
新年早々、景気の悪い話で恐縮だが、日本の人口減少が思っていた以上にヤバいことになっている。
厚生労働省は毎年12月にその年の出生数の推計値を出しているが、2021年はコロナの影響で発表を見送った。そこで10月までの出生数速報値を基に『朝日新聞』が試算をしたところ、80万5000人程度となった。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(17年)ではこれは28年の水準。つまり、政府が想定していたペースよりも7年も早く少子化が進行している。もしこの試算が事実ならば長引くコロナ禍による社会不安や生活苦などによって、日本人が急激に減っていく「人口フリーフォール」に拍車がかかっている恐れもある。
ちなみに、これは日本だけに限った話ではない。少子化が引き起こす人口減少という「国家の危機」については、お隣の韓国、中国はもちろん、欧州の先進国なども頭を抱えている。
『8年も早まった韓国の「人口減少」…社会の再設計を急ぐべき』(WoW!Korea 21年12月13日)
『人口大国の中国の「少子化」が日本以上に深刻になりそうな理由=中国』(Searchina 22年1月1日)
『高齢化ドイツ、労働力先細りに危機感 迫る「人口動態の崖」 将来のインフレや供給不足に懸念』(The Wall Street Journal. 22年1月3日)
かつて『機動戦士ガンダム』などのSFアニメや小説では、「人口の爆発的増加で地球に住めなくなった人類が宇宙へ移住した」というストーリーが定番だった。エンタメ作品でも、「人口が増えすぎて環境破壊や食料争奪戦が進むのを避けるため、殺人ウイルスをバラまく」みたいなテロリストや原理主義者もよく登場した。
しかし、最新の人口動態でそれらは「フィクション」に過ぎなかったことが分かっている。『2050年 世界人口大減少』(ダリル・ブリッカー、ジョン・イビットソン/文藝春秋)などで詳しくまとめられているが、実は各国のデータを分析すると、現実世界の人口は50年をピークに減少に転じて、もう二度と増加しない可能性が高い。先進国はもちろんのこと、アフリカなどの途上国でも日本と同様で、農村部は過疎化が進行し、都市部は少子化に歯止めがかっていないのだ。これはつまり、世界では今後30年、「子どもが生まれない」という問題が、コロナ以上の脅威になっていくということである。
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