「中国製気にしない」「SNSで探しECで買う」Z世代消費の“傾向と対策”:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(5/5 ページ)
1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指す「Z世代」という言葉を見聞きすることが増えた。トレンドの担い手として企業の関心を集めるが、中国でも「Z世代」にターゲットを絞って急成長するスタートアップが次々に現れている。中国のZ世代はどのような特徴を持つのだろうか。
マーケティング依存のリスクも
2社に共通するのは、以下の点だろう。
- 写真SNS「小紅書(RED)」でライフスタイル提案型の投稿を行い、ファン基盤を構築した(特に完美日記はREDが今ほどマーケティングツールと認知されていない17年にアカウントを開設している)。
- インフルエンサーによるライブコマースなどで「バズ」を作った。
- ECチャネルで実績を作り販路を実店舗に広げた。
また、Miss Berryの創業者は大手アルコール飲料メーカー、完美日記の創業者は化粧品メーカーでマーケティングの責任者を務めた経験があり、豊富な業界知識と既存企業が拾えていなかったZ世代女性に特化した戦略で成功した。
とはいえ、2社を含めたZ世代特化型スタートアップが今後も勢いを持続できるかは何ともいえない。
完美日記を運営する逸仙電商は8月に発表した21年4-6月決算で、3億9100万元(約72億円)の純損失を計上した。同期のマーケティング費用は9億7300億元(約180億円)で、売上高(15億3000万元)の6割超を占めている。
一世代前のメーカーは、中国製が持つネガティブイメージを払拭するために研究開発や品質向上に力を入れてきたが、品質イメージがフラットなZ世代をターゲットにするとマーケティング次第で短期間で成長できる。ただし、多くのスタートアップが赤字のまま資金調達を繰り返して規模拡大しているのが実態でもある。
5年前に中国スタートアップの象徴としてもてはやされたシェア自転車のofoは資金ショートで、3年前に史上最速で上場したコーヒーチェーンのLuckin Coffee(瑞幸珈琲)は粉飾会計で行き詰まった。
Z世代マーケティングがスタートアップの持続可能な成長のステップなのか、それとも投資を呼び込むための一時的なバズワードなのか、もう少し様子を見る必要がありそうだ。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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