海外では当たり前! 総務がサラッと身に付けたい“おもてなし精神”:総務のための「オフィス」再考(2/2 ページ)
“おもてなし大国”である日本。顧客への「おもてなし」は海外と比べても秀でているが、社員への「おもてなし」では物足りない点も。社員の生産性向上につながるように、総務が心得るべき“おもてなし精神”とは?
オランダではホスピタリティをビジネスとして捕らえて、そこで学生が一生懸命勉強しています。学部には3つの学科があり、ホテルビジネス、レジャービジネスと、もう一つはファシリティマネジメント(オフィスや商業施設内の社員への総務的なサービス)でした。生徒の就職先はホテル、病院、一般的なオフィス(日本でいうと総務・庶務)まで多岐にわたります。いずれも“ホスピタリティ精神”を存分に発揮し、クライアント(オフィスの場合は社員)に対してサービスを行うための専門ビジネススクールです。
これは筆者からすると大発見であり、衝撃を受けました。なぜ、オランダでホスピタリティなのでしょうか。現地で生活をした経験がある知人によれば、「オランダには工業、製品などのハードのビジネスは発展しておらず、ソフトなサービス産業が発達してきた歴史がある」ということです。なるほど、確かにオランダのホテルやオフィス、公共施設でも心のこもったおもてなしを感じる場面は多いです。利用者として気持ちよくなり心が温かくなる──それらをビジネスとして大学で研究していることが驚きです。
さて、日本に話を戻します。グローバル化、個人主義化などの傾向もあってか、もともと日本人が持っているホスピタリティ精神が、「外」に対してはともかく「内」については相当失われている気がしてなりません。
「ホスピタリティ講習」といった専門トレーニングがサービス業を中心に行われている例を見ると、オランダのように意識してホスピタリティビジネスを教育していく必要性を感じます。
例えば、リッツカールトンなど日本に進出してきた外資系ホテルでも十分通用する人材、総務に例えると「官僚的な規則マニュアル型サービス」ではなく、「おもてなし型サービス」(オフィスコンシェルジュ)を実践できる人材を育てていく必要があります。総務のちょっとした心遣いで、社員が気持ちよく仕事に専念できるようになり、会社への満足度もアップするのではないでしょうか。そうしたサービスを提供できるプロの総務が必要になってきます。
総務のプロがサービスを円滑に提供するためには、テクノロジーの活用も必須です。それこそが企業全体の生産性向上、国際競争力の向上にもつながるのではないでしょうか。
テクノロジーの推進、DXはあくまで手段であり、目的は社員を幸せにすること、サクサクやりたい仕事がはかどる環境を提供することです。まず、総務がホスピタリティ精神を持ち、行動が伴うことで、さらに企業のDXが自然と進み、結果的に社員の幸福度が上がっていくと筆者は信じています。
著者紹介:金英範
株式会社 Hite & Co.代表取締役社長。「総務から社員を元気に、会社を元気に!」がモットー。25年以上に渡り、日系・外資系大企業の計7社にて総務・ファシリティマネジメントを実務経験してきた“総務プロ”。
インハウス業務とサービスプロバイダーの両方の立場から、企業の不動産戦略や社員働き方変化に伴うオフィス変革&再構築を主軸に、独自のイノベーティブな手法でファシリティコストの大幅な削減と同時に社員サービスの向上など、スタートアップから大企業まで幅広く実践してきた。
JFMAやコアネットなどの業界団体でのリーダーシップ、企業総務部への戦略コンサルティングの実績も持つ。Master of Corporate Real Estate(MCR)認定ファシリティマネジャー、一級建築士の資格を保有。
著書紹介
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