プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/8 ページ)
すでに昨年のことになるが、レクサスの新型NXに試乗してきた。レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。そもそもプレミアムとは何か? 非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。
そもそもプレミアムとは何か?
レクサスは言うまでもなく、トヨタのプレミアムブランドである。聞くところによると、フォルクスワーゲン(VW)グループにおけるプレミアムブランドであるアウディは、対VWで利益率5倍。これが昨今のプレミアムブランド経営の成功例の一つといわれている。乗用車ブランドとしては、下からシュコダ、セアト、VW、ポルシェ、ベントレーで構成されている。この他にランボルギーニやRUF、ブガッティもあるが、これはビジネスとしてほぼ別口だ。
東欧新興国マーケット(EUは域内移動の自由が前提なので厳密にいえばそれらの国の出身の非富裕層)を中心とした大衆車ブランドのシュコダ、セアトと、準富裕層向け大衆車のVWブランドで量を確保し、強いバイイングパワーで原価低減を進めつつ、そのコンポーネンツリソースをベースに、プレミアム系のアウディを高付加価値販売することで利益を厚くする。あるいは更に、そのアウディのSUVを下敷きにポルシェブランドでさらに高付加価値を乗せて、もう一段利益を積み上げる構造だ。その手法は見事で、トヨタとレクサスの関係もビジネスとしてはそこに持って行きたいと考えるのが普通だろう。
しかし、そもそもプレミアムとは何か? という話からしていかないと、この話は分かりにくい。良い素材に手間暇を掛けてクルマを作ると、それは高級車であって、プレミアムではない。素材と生産原価が上がった製品を同じ利益率で売った結果、売価が高いのは、作るモノこそ異なれ、ビジネスの本質は何も違わない。
ではプレミアムは何が違うのか? 昨今「プレミアムが付く」とよくいうが、乱暴にいえば「人気があって定価で買えない」というような意味である。ニトリは広告で「お値段以上」と言うがあれはプレミアムの正反対に位置する。
非常に聞こえが悪いのだが「中身以上の値段で売る」ことこそがプレミアムである。VWグループがプレミアム戦略に成功しているのは、VWにちょっと色を付けてアウディの価格で売り、アウディにちょっと色を付けてポルシェの価格で売っているからである。コスパを最重視すれば、アウディと基本同じコンポーネンツを使って作られた一番安いシュコダを買うべき。それが経済合理性である。
では人はなぜその経済合理性を見失うのか? ということになるのだが、そこには幸せな共依存関係がある。口が悪くて申し訳ないが、その本質は、売り手が「気持ちよく欺(だま)し」、客が「ぼったくられる幸せ」にある。
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