自転車専門店「サイクルベースあさひ」が好調 “斜陽産業”のイメージ覆して急成長した理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
自転車専門店「サイクルベースあさひ」運営会社の業績が好調だ。斜陽産業と見られた自転車専門店で、異例の急成長を遂げているのはなぜか? 独自のビジネスモデルに迫る。
価格破壊の激化を危惧
あさひの社史を振り返ってみよう。
戦後間もない1949年、創業者の下田順次氏が子ども用玩具の製造・卸・小売として、大阪市内に旭玩具製作所を創業。
事業承継にあたって、創業者は3兄弟の息子たちにそれぞれお店を与えた。そのうち48年生まれの三男・下田進氏は玩具問屋での修業を経て、22歳で玩具店を開業。72年より玩具の一部として子ども用自転車を販売していた経緯もあり、75年に取り扱う商材を自転車へと全面的に変更した。
その背景として、店舗が立地する商店街の前に大型スーパーが進出して、買物の人の流れが変わったことがあった。自転車ならばアフターサービスが必要。スーパーはメンテナンスまで目が行き届いていなかった。
しばらくは厳しい経営が続いたが、「毎日少しでもファンをつくる」という目標で、「チェーンが緩んでいますよ」「タイヤに空気を入れましょうか」などと、店の前を通る自転車に声掛けをする活動を実践し、地域の有名店になっていった。
しかし、80年代に入ると、大型スーパーやホームセンターで、安価な中国製の自転車が販売されるようになり、全国津々浦々にあった地域密着の個人店がますます減少していった。低価格競争では中国製に到底敵わない。
そこで81年、ロードバイクを中心とするプロショップに業態を変え、愛好家の多い大阪府下の千里ニュータウンに店舗を移転。自転車を愛する仲間が集まる基地という意味で、ファンから「サイクルベース」と呼ばれた。85年にはサイクルベースあさひに商号を変更。このプロショップは、実業団レース関係者の間で有名になり、レーシングチームを率いるほど成功を収めた。
しかし、自転車の使い捨てが当たり前となる価格破壊の激化を危惧して、進氏は自転車の楽しさをよく知るプロショップだからこそ、自転車を皆に大事に長く使ってほしいという思いが募った。そこで89年、専門的なプロショップから、自転車の全てのジャンルを取り扱う大型チェーンの展開に切り替えた。
この頃、衣料の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング、家具のニトリ、家電のヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)のような特定分野で圧倒的な品ぞろえを実現し、総合スーパーを圧倒する、カテゴリー・キラーと呼ばれる業態が台頭してきた。自転車の分野で、ユニクロやニトリに匹敵する革新を行ったのが、サイクルベースあさひといえよう。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 新成人が「欲しい車」ランキング 3位はレクサス、2位はBMW、1位は?
ソニー損害保険は新成人(2001年4月2日〜02年4月1日生まれ)を対象に実施した「2022年 新成人のカーライフ意識調査」の結果を発表した。新成人が欲しい車とは? - 「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間ランキング 1位は「ローン返済が苦しいとき」、2位と3位は?
「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間は? 経験者にアンケート調査を実施したところ、1位は「ローン返済が苦しいとき」だった。 - 「100円×3個=301円」問題でセブンが公式に謝罪 見習うべきは「イオン方式」か
「税込100円×3個=301円」問題で混乱が起きたセブン。お客が困惑した根本原因は事前告知が不足していたことだ。ただ、イオンが採用する価格表記を採用する道もあったかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.