全員に恩恵のある「駅のバリアフリー」、都市と地方でこんなに違う:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)
国土交通省は2021年12月24日、全国鉄道駅のバリアフリー化を加速すると発表した。都市部では鉄道運賃にバリアフリー化費用を加算できる制度を作る。地方部では鉄道駅のバリアフリー設備の整備について、費用の補助率を最大3分の1から2分1のに増やす。「バリアフリー加算運賃」はすべての人に利点がある。
ひとつの提案として、介助アテンダントを検討してはどうか。巡回駅員を用意するくらいなら、いっそすべての列車にアテンダントを乗せる。鉄道事業者はコストダウンのために車掌を廃止してワンマン運転を実施している。このコストダウンとは正反対の考え方だ。
しかし、ワンマン運転と無人駅の組み合わせはやりすぎだ。まるでバスだ。だったらバスで良い、となってしまう。鉄道を利用したい人には最悪の結果になる。
アテンダントについてはいくつかのローカル鉄道で実績がある。よく知られているところでは福井県のえちぜん鉄道だ。アテンダントが乗務するけれども、業務は観光案内ではなく、お年寄りなどの乗降客介助などだ。
08年に書籍「ローカル線ガールズ」で紹介されて、18年に吉本興業が参加する制作委員会が映画『えちてつ物語 わたし、故郷に帰ってきました。』が作られた。こうした乗客介助アテンダントは北海道の道南いさりび鉄道などでも採用されている。車掌との違いは運行業務を行わず、接客のみとなることだ。
1日10往復のローカル線で10駅を廃止すれば、最低10人の駅員は不要となる。一方で10往復の列車すべてにアテンダントを乗せれば、交代制でも2〜4人だろう。鉄道会社の人員削減としては6〜8人。そのくらいでいい。行き過ぎた人員削減は良くない。
アテンダント雇用費用も負担できないというならば、沿線自治体が雇用する。交通政策基本法でも、国が関係者の連携を促進させるべきと定められている。
国は、国、地方公共団体、交通関連事業者、交通施設管理者、住民そのほかの関係者が相互に連携と協働を図ることにより、交通に関する施策の効果的な推進が図られることに鑑み、これらの者の間における協議の促進そのほかの関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講ずるものとする。(交通政策基本法第27条)
コロナ禍でどの企業も収入が減っている中で、巨大装置産業の鉄道事業も苦境である。利用者として「サービスを止めないで」という気持ちは分かるけれども、ただ止めるなではなく、代替案を検討しよう。ただ反対と叫ぶだけでは無策に等しい。理想の交通手段を得るために、自治体や利用者も知恵を出し合おう。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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