喫茶店数は30年で半減! 「純喫茶」はこのまま絶滅してしまうのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
「喫茶店」の休廃業・解散が過去最多を記録――。東京商工リサーチが発表したわけだが、昭和レトロの雰囲気が漂う「純喫茶」も衰退していくのだろうか。
純喫茶は消えてしまうのか
では、純喫茶はこのまま時代の流れとともに消えてしまうのか。
結論から先に言ってしまうと、その心配はないと筆者は考えている。歴史のある老舗喫茶店は当然、店主の高齢化など個々の事情で少なくなっていくだろう。人口減少にともなって個人経営店の絶対数も減っていくことは間違いない。
しかし、その一方で、先ほどのニュースのように、次世代がバトンを引き継いで継続する老舗喫茶店もあるだろうし、今の時代にマッチした形の「昭和レトロをコンセプトとした喫茶店」も増えていく。つまり、従来の純喫茶が消える代わりに、新しい時代の純喫茶が生まれるという新陳代謝が進んでいくだけの話なのだ。
「いやいや、新陳代謝しちゃダメなんだって。純喫茶は文化なんだからとにかく守っていかないと」と感じる方もいるだろうが、そもそも純喫茶というのは、そういう格式ばったものではない。その時代に合わせて純喫茶の定義は変わってきているし、店側も柔軟に業態やコンセプトを変えてきているからだ。
そのあたりを分かっていただくには、純喫茶のルーツをさかのぼっていく必要がある。
ご存じの方もいらっしゃると思うが、なぜ「純喫茶」と呼ばれるのかというと、「不純な喫茶」と区別したからだ。明治に西洋から「カフェー」という文化が入った当初、ここは文化人や上流階級の人々のサロン的な役割だった。それが関東大震災をきっかけに、カフェーは男性客が酒を楽しみ、女給から「密」な接客サービスを受ける現在のキャバクラ的な業態へ変わっていったのである。
そこから「純粋に喫茶だけ」という斬新な業態、純喫茶が生まれて徐々に増えていくが、実はこの当時は、別に本業を持つ人々による「サイドビジネス喫茶」が多かった。
「最後のほんの喫茶だけと云ふ店は嘗ては資生堂などがめぼしいものでその数が増えたことは、殆ど現代カフェー界の新傾向と云ってもよい位その看板が新しく現はれる勢ひは大したものでお菓子屋さんや薬屋さんが盛んに兼営をしてステツキを同伴した人達の休息所としているが、此の新しい社会現象については後述する所あるべし」(読売新聞 1925年11月14日)
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