金利が上がっても株価は下がらない? 「今の株価は下がりすぎ」(1/2 ページ)
日米ともに株式相場が下落している。しかし日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは、「金利が上がると株価が下がる類いの話は、さほど重要ではない」と話す。本来は、政策金利の引き上げは株価には影響しないというのだ。
日米ともに株式相場が下落している。2022年に入ってから、日経平均は7.7%下落して2万7000円前後。米国株価指数S&P500は9.1%の下落、ハイテク株の多いナスダック総合指数は14.5%も下落した。
背景には、ウクライナ情勢や米国金融当局のインフレ対抗姿勢があるといわれるが、実のところどうなのか。
日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは、「金利が上がると株価が下がる類いの話は、さほど重要ではない」と話す。本来は、政策金利の引き上げは株価には影響しないというのだ。
金利が上がるとなぜ株価が下がるのか
一方で、大手新聞をはじめ各所でいわれるのは、「政策金利が引き上げられると、特に成長期待が大きいグロース株の株価が下がる」ということ。この理屈は、株価の適正値はどのように計算されるかを元にしている。
一般に、株価はその企業が将来生み出す利益の合計だとされる。ただし、今の100万円と来年の100万円の価値は同じではない。今の100万円を金利1%で預ければ来年には101万円になる。逆にいうと、来年の100万円を現在の価値に直すと約99万円だということだ。この計算を“割り引く”という。
こう考えると、遠い将来の利益ほど株価の算出においては影響は小さくなることが分かる。そして金利が高いほど、将来の利益の価値は小さくなる。逆に金利が低いほど将来の利益の価値は高く評価されることになる。
これを、「今はまだ小さいけど、成長率が高く、将来大きな利益を稼ぐ見通し」というグロース企業に当てはめてみよう。グロース企業の価値のほとんどは、将来の利益だ。そして将来の事業見通しが同じであれば、金利が低くなれば現在価値は高くなり、つまり株価は上昇する。逆に、金利が上昇すれば現在価値が下がり、株価は下落することになる。
これが「政策金利が引き上げられると、グロース株の株価が下がる」ことにつながるわけだ。
関連記事
- 石油価格上昇 インフレによるスタグフレーションの心配はない?
昨今、原油価格の高騰などから、景気後退とインフレ(物価上昇)が同時に起こるスタグフレーションを警戒する声が聞かれる。1970年代のオイルショックの際には、景気後退で給料が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、生活者にとって極めて厳しい状況となった。 - 株価3指数いずれも最高値はバブルか? コロナ前を超えてきた経済の読み解き方
米国の株価が絶好調だ。7月13日の終値では、S&P500、ダウ工業株平均、ナスダック総合指数と主要株価3指数がいずれも最高値を更新した。これは果たしてバブルなのだろうか? - 回復続く経済における3つのリスク 財政、ワクチン、貯蓄率
コロナ禍を乗り切ったかに見える経済にはどんなリスクがあるのか。日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト神山直樹氏は、財政、ワクチン、貯蓄率について、3つのリスクがあると言う。 - “株価と経済の乖離”は時代遅れ? コロナ以前まで回復してきている経済
2万8000円を超え連日バブル後最高値を更新する日経平均、過去最高値を更新し続ける米NYダウ平均株価など、株高が続いている。これに対して、「経済と乖離(かいり)した株高」と呼ぶ人もいるが、果たしてどうか。 - 株価二番底はない? 今の株価がバブルではないワケ
「二番底は来ないのかとよく聞かれるが、今想定される範囲内では、大きく下がる理由はほとんどない」。日興アセットマネジメントの記者向けセミナーで、チーフストラテジストの神山直樹氏は、このように話した。 - 金価格上昇をどうみるか
このところの金価格の上昇は、「2019年年央に始まった米国実質金利のマイナス領域入りがしばらく続きそうだ」、と投資家が認識したことによる、とみている。実質金利とは、金利から物価上昇率を引いたもので、このレポートでは「実質金利=米国10年国債利回り−物価(CPI、食品・エネルギー除く)上昇率」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.