株価3指数いずれも最高値はバブルか? コロナ前を超えてきた経済の読み解き方(1/2 ページ)
米国の株価が絶好調だ。7月13日の終値では、S&P500、ダウ工業株平均、ナスダック総合指数と主要株価3指数がいずれも最高値を更新した。これは果たしてバブルなのだろうか?
米国の株価が絶好調だ。7月13日の終値では、S&P500、ダウ工業株平均、ナスダック総合指数と主要株価3指数がいずれも最高値を更新した。これは果たしてバブルなのだろうか?
「バブルという名前を付けるのはおかしい。経済全体のメカニズムとして、現在の株高がバブルというには(企業の)利益や売り上げがついてきている」。こう話すのは、日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト神山直樹氏だ。
確かに株価は上昇を続けているが、経済の実態とかい離して上昇するのがバブル。ところが今回の株価上昇の裏側には、企業業績の裏付けがある。世界経済を見る上で、神山氏が重視する米国の雇用統計と小売高統計を見ると、経済と企業業績の回復具合が分かる。
米国の非農業部門雇用者数の推移を見ると、コロナ禍で2078万人減と大きく落ち込んだ後、一気に回復。失われた雇用の半分が戻ってきた。これは先行して復調した製造業の雇用だ。そして、直近ではじわりじわりと非製造業の雇用も回復してきている。
このあと雇用数は「7月、9月に大きく上に跳ねるだろう」と神山氏は見る。これは、失業手当の上乗せ分が切れるからだ。米国の内需は回復しつつあるが、手厚い失業手当があるために職場への復帰が進んでいない。上乗せ分が切れることで急速に雇用が回復し、元に戻るのは2021年の12月くらいだと見込む。
小売売上高の回復も著しい。コロナによる一時的な落ち込みはすでに回復し、過去にないレベルまで高くなっている。雇用が戻っていないのに、消費だけが大きく伸びているのは政府の財政政策によるものだ。「コロナ前の小売売上高から、大幅に上を抜いている。この差が財政。株式市場で株価が上がっているのも同じ状況だ」(神山氏)
米国の小売売上高が重要なのは、米国の需要が世界経済を牽引しているからだ。米国の需要が旺盛ならば、日本や中国などの輸出国は大きくその恩恵を受ける。「米国の輸入もコロナ前を超えている。日本の輸出もリーマンショック前を超え、もちろんコロナ前を超えている。輸出国に恩恵が行き渡っている」(神山氏)
例えばトヨタ自動車で見れば、通期ではコロナの影響で業績は落ち込んだものの、四半期単位で見た場合、20年10−12月期は売上高、営業利益ともに過去最高だ。21年1-3月期も、過去最高水準となった。
コロナ禍による影響は、飲食、旅行などの内需業界ではいまだに厳しいが、株式市場に占める比率は小さい。日本の株価指数を構成する銘柄の約半分が、輸出に業績を左右される製造業だからだ。このことが、コロナ後の秋から急上昇した日経平均株価にも現れている。
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