「うまい棒」はなぜ42年間も「10円」をキープできたのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「うまい棒」が10円から12円に値上げをする。42年間も値上げをしてこなかったので、「よくがんばった」「すごい」といった声が出ているが、そうした言葉で片づけてよいのだろうか。筆者の窪田氏は違った見方をしていて……。
「うまい棒」の値上げから学ぶべきこと
だが、現実はそうではない。やおきんやリスカが「現状維持」型の中小企業だったら、「うまい棒」は90年代あたりで20円に値上げして、利益が出ないからととっくの昔に生産中止に追い込まれている。
「うまい棒」が42年も「10円」という価格を守れたのは、製造元と販売元がともに「現状維持」にとどまらず、成長・拡大を目指してきた中小企業ということが大きいのだ。
そういう本質的なところがいまいち語られていないのは、「企業努力」というザックリとした言葉のせいだ。スポ根的なコスト削減を連想させるこのワードによって、「中小企業こそ規模拡大を目指さなくてはいけない」という教訓がかき消されている。しかも、下手をすれば、このニュースを「中小企業は原料高で大変だから政府が補助金で支えるべき」なんて方向に話に持っていこうという人もいる。
われわれが「うまい棒」の値上げから学ぶべきは、消費者に受け入れられる製品・サービスを提供し続けている企業というのは、「現状維持」にとどまらず成長・規模拡大しているということなのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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