ドバイの「スシロー」は1時間待ちの日も! 海外進出を続ける外食大手が狙う“コロナ後”の世界:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
コロナ禍でも積極的に海外進出する外食企業がある。海外の成長を取り込んでいく狙いがある。各社の戦略を追った。
実績を積み上げてきたサイゼや吉野家
これまで実績を積み上げている企業を見てみよう。吉野家ホールディングスは「吉野家」と一部「はなまる」を米国、中国、台湾、マレーシアなどに955店(21年11月末)出店。
サイゼリヤは中国、香港、台湾、シンガポールに464店(21年8月末)がある。
モスフードサービスの「モスバーガー」は、台湾、シンガポール、香港、タイ、インドネシア、中国、オーストラリア、韓国、フィリピンに427店(21年9月末)がある。
力の源ホールディングスの「一風堂」は、米国、シンガポール、香港、台湾、中国、タイ、オーストラリア、英国など15カ国に283店(21年9月末)を出店。
大戸屋ホールディングスは、「大戸屋」を直営とFCを足した114店(21年10月末)を、タイ、台湾、インドネシア、香港、中国、シンガポール、米国へと展開している。
「すき家」「はま寿司」のゼンショーホールディングスはどうか。18年に米国、カナダ、オーストラリアに約3700店(当時)を展開する持ち帰り寿司チェーンのアドバンスド・フレッシュ・コンセプツを買収している。結果的に、コロナ禍に備えた非接触性が高いテークアウト業態として、外食のリスクヘッジとなる役割を果たした。
中国に浸透しているのは、重光産業の「味千拉麺」。熊本豚骨ラーメンのチェーンで、日本には66店なのに対して、海外は754店もある。味千の日本の店は、49店が熊本県に集中しており、関東以北は北海道に1店あるだけだ。かつては東京にも店舗があったが撤退してしまった。一方で、世界では中国本土を中心に15カ国に進出している。これは、FC契約を結んだ香港出身の実業家・藩慰氏の味千(中国)の活躍によるものだ。1996年に香港に進出して繁盛店となり、深センでも成功。中国全土に拡大して、2007年に香港株式市場に上場した。藩慰氏は、500億円を超える資産を持つ大富豪にまで成り上がったという報道もあった。
25年には大阪で日本国際博覧会(大阪万博)が開催される予定だ。過去の感染症のパンデミックは3〜5年で収束しているので、さすがに25年までには終わっているだろう。24年に開催される美食大国フランスのパリオリンピックをきっかけに、現地を訪問してグルメに目覚めた世界の人たちが、よりお得な日本に殺到することも想定される。
コロナ禍における日本の経済的影響は他国よりも深刻だ。その経済的影響が大きければ大きいほど、日本人が高いと感じる外食も、訪日外国人にとっては激安となる。そのため、美食を楽しみに訪日する人は増える。
体力のある外食企業は、世界で海外旅行が正常化する日に向けて、着々と準備を進めている。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
お知らせ
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駅弁といえば、かつては駅や列車内で買って食べる、列車旅に欠かせないものだった。それが今やスーパーでも見かけるほどに、日常的で身近な存在となっている。
元は「駅の駅弁」だったのになぜ、駅を離れて販路を広げることができたのか?
列車の高速化やモータリゼーションの煽りを受け、さらにコロナ危機にも直面し、駅で売れない状況に追い込まれながらも生き残る、駅弁の謎に迫る一冊。
◆「駅で売れない駅弁」だった?「いかめし」ヒットの理由を探るべく、いかめし阿部商店・今井麻椰社長にインタビュー!
◆コラム「駅弁はなぜ、高いのか?」など
◆巻末には「京王百貨店駅弁大会歴代売り上げベスト5」収録
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