函館本線「山線」並行在来線として2例目の廃止、鉄道を残す方法は?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)
1月31日に西九州新幹線の並行在来線、2月3日に北海道新幹線の並行在来線と、並行在来線の処遇に関する報道が相次いだ。並行在来線とは整備新幹線に平行する在来線のうち、JRが不要と切り捨てた区間だ。切り捨てられるほどなので、地元の人々の利用が少なく生活路線としての存続は難しい。それでも鉄道を残す方法はあるのだろうか。
並行在来線、西九州新幹線の特殊事情
並行在来線についておさらいしておこう。並行在来線とは「整備新幹線に平行する在来線」のうち、JRが「この区間は不要」と切り捨てた区間だ。
新幹線が開通すると、新幹線と重複する在来線区間の利用者が減る。収入が減って赤字路線になる。あるいはもともと赤字で、さらに膨らむ。だから整備新幹線の着工条件に「JRが運行を引き受ける」と「JRの並行在来線からの撤退を地元自治体が了承する」が含まれる。このほかに「建設費の一部を自治体が負担する」などがある。
「JRに新幹線の運行を担ってもらうからには、在来線から撤退してもよい」という取り決めができていて、在来線のどの区間を撤退するかはJRが決める。逆に、JRが必要だと思えば、その区間は手放さなくていい。
北陸新幹線においては、信越本線の高崎〜長野間が平行しているけれども、JR東日本は高崎〜横川間と篠ノ井〜長野間は手放さず、横川〜篠ノ井間を切り離した。残された区間のうち、軽井沢〜篠ノ井間は第三セクターのしなの鉄道に移管され、横川〜軽井沢間は引き受け手がなく廃止された。九州新幹線では、鹿児島本線のうち八代〜川内間だけが切り離された。
JRがいらないと思うほどの赤字区間だから、並行在来線は赤字で当然だ。それでも通学や通院などで必要ならば、地元で運行を引き受けるしかない。赤字覚悟だけれど、新幹線の開通で地域に利点が大きければ許容しなくてはいけない。
新幹線とピッタリと並んでいなくても、JRが不要と判断した区間が並行在来線になる。西九州新幹線の場合、長崎本線より大村線の方が近いけれども、JR九州は長崎本線を指定した。地理的な問題より輸送動向が重視されるからだ。福岡〜長崎間で捉えれば長崎本線の需要が激減する。大村線はどちらかといえば長崎〜佐世保間の一部を担うから、西九州新幹線で代替できない。
ただし、長崎本線については「平行しているとはいえない」と地元が納得しなかった。そこで妥協案として「JR九州から切り離すけれども、あらためてJR九州が自治体から運行を受託する」という形で決着した。これが冒頭の「第二種鉄道事業を許可」である。
現在はJR九州が保有し運行する「第一種鉄道事業」だけれど、西九州新幹線開業後は運行のみを担当する「第二種鉄道事業」になる。線路保有者(第三種鉄道事業)は佐賀県と長崎県が設立する「一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センター」に移管される。
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