新生日産が目指す道とは 電動化への“野望”を読み解く:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(1/4 ページ)
日産は今、再生の道を歩んでいます。日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。その直後のコロナ禍を経て、4か年計画「NISSAN NEXT」を発表。さらに新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表しました。
日産は今、再生の道を歩んでいます。
2018年11月、当時、日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。しかも、日産にとって不幸だったのは、ポスト・ゴーン体制が生まれたばかりの翌19年暮れに、コロナ禍という厄災が世界を襲ったことでしょう。ゴタゴタの日産に、世界的な脅威の発生。最悪のタイミングです。
そのため19年度の日産の決算は散々なものとなってしまいました。世界での販売台数は前年比マイナス10.6%の約493万台に。もちろん収支は赤字で営業損失は405億円です。さらに、翌20年度は約420万台にまで販売が減少します。過去10年ほどをかけて、日産は世界販売台数を400万台規模から500万台後半にまで伸長させてきましたが、その伸びた分すべてが、きれいになくなってしまうほどの減少。まさに衝撃的な数字です。
そこで日産は、大きな決断を下します。構造計画です。
リストラと選択&集中で体質を改善
20年5月28日、日産は23年度までの4か年計画「NISSAN NEXT」を発表します。収益性の改善と、将来にわたって成長するための事業構造改革です。驚くのは、この計画実施のために、6030億円もの構造改革費用および損失を計上していること。大赤字を出してでも、生まれ変わろうというわけです。
この「NISSAN NEXT」のポイントは2つあります。1つが「規模の最適化」、そして2つ目が「選択と集中」です。
「規模の最適化」は、端的にいえばリストラです。生産能力とモデル数を減らします。具体的にいえば、生産能力を20%ダウン、モデル数も69から55車種に約20%削減。これにより固定費を18年比で3000億円削減します。
「選択と集中」では、コアマーケット(市場)/コアプロダクト(製品)/コアテクノロジー(技術)を定めて、そこに集中します。
コアマーケットは、日本、中国、北米です。逆にいえば、それ以外の欧州などの市場は、現状維持が目標です。
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