新生日産が目指す道とは 電動化への“野望”を読み解く:鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/4 ページ)
日産は今、再生の道を歩んでいます。日産代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が逮捕され、日産は、すべてが変わりました。その直後のコロナ禍を経て、4か年計画「NISSAN NEXT」を発表。さらに新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表しました。
夢の新世代電池の実用化と電動化への傾倒
新体制下の元、着々と構造改革を進める日産は、さらに21年11月に新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表します。「Ambition」とは「野望」や「野心」という意味。では、その野望や野心とは何なのでしょうか。それは「電動化」です。
日産は、今後5年で電動化のために約2兆円の投資を行うと宣言しました。そして28年度に、次世代の高性能電池と目される、全個体電池を市場に導入。30年度まで、つまり、これから8年ほどで15の電気自動車と、23の電動車を投入する計画です。世界販売の50%以上を電動車にしようというのです。
驚くのは、まだまだ実用化は先と思われていた全個体電池を、ハッキリと量産化する時期まで示したところです。全個体電池は、従来のリチウムイオン電池の約2倍のエネルギー密度を有し、充電時間は3分の1になるといわれています。これが実用化されれば、より大量の電池を搭載できるようになるため、大型SUVのEV化に適していると考えられています。
また、日産は、この新しい電池を28年度に1kWhあたり75ドル、将来的には65ドルまで低減するのが目標と明かしました。さらに、これまであるリチウムイオン電池も、28年度までに現在の65%までコストを低減するというのです。半額以下です。
EV普及の最大のネックは、搭載する電池の価格が高すぎることにあります。それが、あと6年ほどで、半額以下にするというのです。さらに最新の全固体電池も1kWhあたり75ドル。現行リーフとほぼ同等の60kWhを搭載しても4500ドル、つまり約54万円に過ぎません。これくらいの価格になれば、十分にガソリン・エンジン車とコスト面でも競えることでしょう。
関連記事
- 日産、全固体電池EVを28年販売 充電時間3分の1に
日産自動車は11月29日、長期ビジョン「アンビション2030」を発表し、次世代バッテリーである全固体電池を使った電気自動車(EVを投入)を2028年に市販する計画を明らかにした。 - 逆境のマツダ 大型FR導入で息を吹き返せるか?
今年、目の離せないメーカーがあります。それがマツダです。実のところ、コロナ禍でのマツダのビジネスは散々なものでした。しかし、歴史を振り返れば、マツダは、これまで何度も、もっと辛い状況を耐え、そして、そこから復活してきたメーカーでもあります。 - ソニーも参入 各社からEV出そろう2022年、消費者は本当にEVを選ぶ?
22年は、これまで以上に「EV」に注目の年となることは間違いありません。なぜなら、22年は市場に販売できるEVがそろう年になるからです。 - 実は日本で一番に売れている「メルセデス・ベンツ」 高級車の象徴はなぜ輸入車ナンバー1に至ったのか?
今、日本で最も数多く売れている輸入車は何かといえば、それは「メルセデス・ベンツ」です。しかし、メルセデス・ベンツが日本で一番多く売れるブランドになったのは、ここ最近の話。かつてのメルセデス・ベンツは「高級車の象徴」であり、販売される数もそれほど多いものではありませんでした。 - スバルは、どこで儲けている? 国内もASEANも中国も欧州でも売れてない
小さなメーカーですが、他にないキラリと光る優れた技術を持っているというのがSUBARU。しかし、どれだけSUBARU車が売れているかといえば、国内ではトヨタの10分の1。しかもASEANも中国も欧州でも、ぜんぜん売れていないのです。では、どこでSUBARUは儲(もう)けているのでしょうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.